科学・基礎/半導体デバイス物理
6.バイポーラトランジスタで増幅が起きる条件
pn接合になったときのキャリア濃度、pn接合ダイオードを流れる電流の解析が終わり、つぎはというとpnpまたはnpn接合によって作られるバイポーラトランジスタに展開することになります。
ダイオードとちがってトランジスタは3つの端子がありますから、各端子の電位の関係は複雑です。代表的な回路接続をしたとき、トランジスタで増幅が起きる条件にしぼって話を進めます。
トランジスタの増幅作用については「バイポーラトランジスタ」の4項で説明しています。そこではnpnトランジスタを図6-1のように接続した場合を考えています。ここでは同じ場合に増幅が起こる条件を数式で表します。
この回路の場合、エミッタから流れ込む電流 \(I_{E}\) が入力電流であり、この電流に対する抵抗 \(R_{i}\) をこの回路の入力抵抗と言います。この場合の入力電力 \(P_{i}\) は \[P_{i}= I{_{E}}^{2}R_{i}\] です。このときコレクタから流れ出す電流 \(I_{C}\) が出力電流で、負荷抵抗 \(R_{L}\) をつないだときに取り出せる出力電力 \(P_{o}\) は \[P_{o}= I{_{C}}^{2}R_{L}\] となります。この場合の電力利得 \(G\) は入出力の電力の比 \[G= \frac{P_{o}}{P_{i}}= \frac{{I_{C}}^{2}R_{L}}{I{_{E}}^{2}R_{i}}\] で定義されます。ここで \(G \gt 1\) となるのが、「電力利得が得られる」、あるいは「電力増幅が起きる」条件です。
もし、\(I_{C}\simeq I_{E}\) であれば、電力利得は \[G\simeq \frac{R_{L}}{R_{i}}\] と書けるので、負荷抵抗 \(R_{L}\) を入力抵抗 \(R_{i}\) に比べて大きくなるように選べば、\(G\) は1より大きくなります。
このような条件が成り立つようにするには2つのpn接合をどういう条件で構成したらよいかを次項で検討しますが、これには前項までのpn接合を流れる電流についての式が役立ちます。
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