電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

12.IGFETの作り方(3、ゲート絶縁膜の作製)

 図10-1(再掲)の(d)以降の工程は、最後の金属電極を作るところを除くと、これまで説明してきた、SiO膜の除去、SiO膜の再形成、フォトリソグラフィによるSiO膜の穴開けの工程の繰り返しになります。

 ゲート絶縁膜は以前に説明したようにIGFETの特性を不安定にする要因を作りますから、クリーンで良質なSiO膜にする必要があります。拡散のマスクとして使ったSiO膜を流用するようなことは普通はしません。また拡散用のマスクはある程度厚い必要がありますが、ゲート絶縁膜は静電容量の関係で薄い方がよいです。そこでナトリウムなどが混入しないように注意して熱酸化しゲート絶縁膜用のSiO膜を作り直します。

 (d)の工程では(b)でp型領域に不純物を導入する際、マスクとして使ったSiO膜を一旦、フッ化水素酸で取り除きます。ここではソース、ドレイン領域の外側の部分のSiO膜は除去せずに残していますが、すべて除去しても構いません。

 SiO膜が除去され露出したシリコン基板表面を再度、熱酸化して薄いSiO膜を着けます。これが(d)の状態です。

 最後に電極を作ります。ソースとドレインの電極は半導体表面に接触させる必要があるので、p+領域上部の一部分のSiO膜を除去して開口を設けます(e)。この工程は基本的には(b)の状態を作る工程の繰り返しですが、違ったところがあります。

 それは開口を設ける位置の問題です。開口はp+領域の上部から外れないように位置決めする必要があります。p+領域と周辺のn型領域に明確な特徴の差異があればSiO膜は透明なため、マスクの位置を合わせることができますが、これはあまり期待できません。このため(b)の工程でのマスクの位置と(e)の工程でのマスクの位置を合わせられるようにシリコン基板表面にマークを設けるなどの手段がとられます。

 なお、トランジスタの機能には関係のない部分のシリコン基板表面は通常、絶縁膜で覆っておきます。これを保護膜とかパッシベーション膜と言うことがあります。半導体表面は活性で酸素や水分があれば室温でも徐々に反応が進んで変化します。これが長い時間経った後にトランジスタの性能を変化させる恐れもあります。また半導体表面に配線のワイヤなどが触れると動作に異常が起こったりすることも考えられます。そこで半導体表面は絶縁膜で覆っておくのが普通です。(d)でゲート部分以外では以前に着いていたSiO膜を残したのはパッシベーション膜として利用するためです。

 さて最後に電極金属を付けるのが(f)の工程です。これもIGFETの作製では重要な工程ですので、次項で詳しく説明することにします。