電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

11.論理回路

 IGFETは多数個を集積した集積回路として使われますが、それを説明するためにはもう少し回路の話をしなければなりません。デジタル回路について説明します。デジタルの世界は0と1の2値の世界です。別に2値でなければならないことはないのですが、電子回路で実現するには2値がもっとも簡単です。2種類の電圧を決め、高いときを1、低いときを0に対応させればよいわけです。

 われわれが普通に使っている数字は10進数です。これは0~9は1桁の数字で表せますが、10以上は2桁、100以上は3桁と桁数を増やして大きな数を表します。一方、0と1だけを使った2進数では1桁で表せるのは0と1だけで、2を表すには10と2桁が必要で、3は11ですから、4になるともう3桁が必要になります。4桁(4ビットと言います)の2進数ならつぎの表に示すように0~15までの10進数を表現できます(ここでは不要な上位の桁にも0を入れて示しています)。

0  0000    1  0001   2  0010    3  0011 
4  0100    5  0101    6  0110    7  0111 
8  1000   9  1001    10  1010    11  1011 
12  1100    13  1101    14  1110    15  1111 

といったように0~15までの10進数を表現できます(ここでは不要な上位の桁にも0を入れて示しています)。

 4桁を費やして10進数の16個分しか表せないので、桁数ばかり多くなって扱いにくいように思われますが、それは人間の感覚で、電子回路にとっては桁数は多くなっても電圧を2種類だけにしてもらった方がはるかにありがたいのです。

 2進数の演算をする場合を考えてみます。足し算の2+3=5を2進数で表すと、0010+0011=0101となります。足す数と足される数の同じ桁を比べて0と0なら答は0、0と1なら答を1、1と1なら答を0にして上の桁を1に桁上げする、という規則で足し算ができることがわかります。このような規則が決まればそれを電子回路で実現することができます。このような規則を実現する回路を論理回路と言います。

 例えば2つの入力の両方が1のときだけは出力を1にする回路をAND回路と言います(日本語なら「かつ」回路ですが、そういう言い方はしません)。2つの入力をAとB、出力をXとするとつぎの表のような関係になります。このような表を真理値表と呼んでいます。

 A  B  X
 0  0  0
 1  0   0 
 0  1   0 
 1  1  

 また、2つの入力の一方または両方が1のとき、出力を1にする回路をOR回路と言います(日本語なら「または」、「あるいは」です)。真理値表はつぎのようになります。

 A  X 
 0  0 
 1  1 
 0  1  1
 1  1   1 

 この2つと前項で説明したインバータ(NOT回路とも言います)が論理回路の基本となります。これら3種類だけを組み合わせて要求される論理を組み上げることができます。例えば、先程の例の加算をする回路も作ることができます。

 AND回路、OR回路も、インバータの回路を応用すればIGFETで実現できます。図11-1のように2個のIGFETのソース-ドレイン回路を縦続させるとAND回路になります。IGFETは入力端子(ゲート電極)にプラスの電圧(例えばV=+5V)をかけるとソース-ドレイン回路に電流が流れますが(ONになると言います)、V=0Vにすると電流は流れなくなります(OFFになるといいます)。2つのIGFETの入力端子A、Bの両方に+5Vをかけたときだけ負荷抵抗Rに電流が流れ、出力端子Xの電圧が下がります。両方またはどちらか一方の入力端子が0Vなら、そのIGFETのソース-ドレイン間には電流が流れないので、負荷抵抗Rにも電流が流れず、出力端子の電圧は電源電圧Vにほぼ等しい高い状態になります。高い電圧のときを1、低い電圧のときを0とすると真理値表はつぎのようになります。

 A B
 0  0   1 
 1  0   
 0    
 1  1   0 

 このA、BとXの関係は上のAND回路の場合のちょうど逆になっていますので、正確に言うとこれはAND回路ではありません。これをNAND回路と呼びます。NANDはANDの出力にNOT回路(インバータ)を入れたときに相当します。IGFETを普通に使うとインバータになってしまうのでこのようなことになります。AND回路が必要ならNAND回路の出力にインバータを入れればよいことになります。

 図11-2のようにIGFETを並列に接続するとOR(この場合も正しくはNOR)回路ができます。両方またはどちらか一方のIGFETがONになり、負荷抵抗RLに電流が流れれば、出力端子Xの電圧が低下します。両方のIGFETともOFFであれば出力端子Xの電圧は高くなります。真理値表はつぎのようになります。

 A   B   X
 0  0   1
 1  0   0
 0  1  0
 1  1  0

 このようなIGFETを複数含む回路を1つの基板上に作り込んだものが、集積回路(IC)です。