電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

10.IGFETを使ったインバータ

 前項で紹介したIGFETに負荷抵抗Rをつないだ図10-1の左側に示す回路の動作を説明しましょう。IGFETのドレイン電流Iとドレイン-ソース間電圧Vdsの関係は項で説明しましたが、図10-1のようになります。ここではゲート電圧Vを4種類変えた場合を示していますが、Vの値は連続的に変えることができます。

 図の電圧と電流の値は仮想的なものですが、実際のIGFETからそれほどかけ離れてはいないはずです。例えばゲート電圧V=3Vのときの特性を見て下さい。Vが0から1V位までの間ではVが増加すると、それに比例してIも増加します。しかしVdsが2Vを越えると、Iは増えなくなり、ほぼ一定となります。この例ではVが4Vのとき、Iが一定となる電流値は60μAくらいです。Vが小さくなるとこの電流値も小さくなり、V=2Vでは15μA程度となります。

 普通の物質に電極を付けて電圧をかけた場合は、オームの法則に従って電圧に比例した電流が流れ、電流が一定になったりすることはありません。図のような特性はIGFETのソース-ドレイン間に特徴的なものと言えます。

 それではソース-ドレイン間に負荷抵抗Rをつなぐとどのようなことが起こるでしょうか。ドレイン電極にR=100kΩ(キロオーム)の抵抗をつなぎ、その先をV=5Vの電源につないだとしましょう。V=2Vとし、 I=15μAの電流をソース-ドレイン間に流すと、負荷抵抗Rの両端には1.5V(=0.000015A×100000Ω)の電圧が発生します。この電圧とドレイン-ソース間電圧Vdsを足したものが電源電圧V=5Vにならなければいけないので、Vds=3.5Vとなります。

 つぎにVを3Vに変えてみます。Iは30μAに増えます。負荷抵抗Rの両端に発生する電圧は3Vになりますので、Vdsは2Vに減少することになります。これからわかるようにV=5VでR=100kΩとした場合、図のような赤色で示した直線を引くと、この線とI-Vds特性の交わる点がそのVのときのVdsを示していることが分かります。つまり電源電圧V=5V、負荷抵抗R=100kΩのときはこの直線から外れたところでIGFETが動作することはありません。

 この直線は横軸上のVds=5V(電源電圧)の点と縦軸上のI=5V/100kΩ=50μAの点を結んだ直線で、負荷直線といいます。また負荷直線とIGFETのI-Vds特性の交点を動作点と言います。この図からゲート電圧に対するドレイン電圧の特性がわかることになります。例えばゲート電圧を3Vから0Vに下げると図からドレイン電圧は約1Vから5Vに上昇することがわかります。負荷抵抗の抵抗値を変えると負荷直線の傾きが変わるので、この電圧も変わります。

 このようにゲート電圧を入力と見て、ドレイン電圧を出力と見ると、入力電圧を下げたとき、出力電圧は上がり、逆に入力電圧を上げると出力電圧は下がることがわかります。つまり入力電圧の変化に対して出力電圧は逆方向に変化します。入力の変化を反転して出力するはたらきをもった回路をインバータと呼びます。インバータは何もしていないように見えますが、デジタル回路の基本となる重要な回路です。