電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

9.IGFETの使い方

 前項まででIGFETそのものの説明は大体終わりました。でもこれをどのように使うのかについてはあまり説明していません。ここでは半導体デバイスについてのお話が主で、電子回路にはあまり立ち入るつもりはありませんが、とはいってもトランジスタが使われるのは電子回路のなかでですから少しは説明したいと思います。

 いろいろ前置きするよりもIGFETを使うためのつなぎ方から入った方がわかりやすいかもしれません。図9-1を見て下さい。IGFETのソース-ドレイン間に直流電源である電池と抵抗器Rがつないであります。それからソースとバックゲート電極をつないだところに何やらコマのようなマークが書かれています。

 これとほとんど同じつなぎ方をした図が最初に紹介したアメリカ特許(1)(2)のFig.1に載っています(図3-1参照)。実はこのつなぎ方がIGFETをアナログ用またはデジタル用に使うときの基本になります。

 ここで重要なのは抵抗器Rの役割です。電子回路における抵抗器はどのようなはたらきをするか、説明しておきます。抵抗器は銅線のような導体よりは電流が流れにくいものですが、かといってSiOのような絶縁体のように電流がほとんど流れないものでもない中間的なものです。半導体はこの部類に属すると言えますが、半導体デバイスはp型やn型を作る必要があるので、きちんとした結晶である必要があります。普通の抵抗器にはそのような必要はありません。とはいってもいろいろな値の抵抗値をもったものを用意しなければならないので、うまく抵抗値が調整できることが必要で、またできるだけ温度など周りの条件で変化しないことが必要です。古くから炭素や金属の薄い膜を使い、膜の厚さや面積で抵抗値を調節したものが使われています。

 抵抗器というと電流を流しにくくするというイメージが沸くかも知れませんが、電子回路のなかでは電流を電圧に変換するという役割が重要です。ある抵抗器に直流電流を流すとその電流値と抵抗値の積に等しい電圧が抵抗器の両端に発生します。1アンペアの電流をある抵抗器に流したとき、その両端に1ボルトの電圧が発生したら、その抵抗器の抵抗値は1オームであると言います。1アンペアで100ボルトが発生したら100オームです。この関係が有名なオームの法則です。

 これまで説明してきたようにIGFETではゲートに加える電圧によってソース-ドレイン間に流れる電流をコントロールすることができます。でもソース-ドレイン間に電池を導線でつないだだけでは、この電流の変化を取り出して利用することができません。ここに抵抗器RL(負荷抵抗と言います)を入れるとソース-ドレイン間に流れる電流に比例した電圧がこの負荷抵抗の両端に発生します。この発生した電圧を別のMOSFETや別の部品につなげればいろいろ利用することができるのです。

 さきほどのコマのようなマークですが、これは大地につなぐこと(接地と言います)を意味します。地球上では大地を巨大な導体とみなしてここを電位の基準、すなわち0Vとします。家庭に来ている100Vの電源も大地を基準にしています。大地は英語でアースとかグランドとか言われます。電気洗濯機や電子レンジはアースをとる(接地する)ように奨められています。これは何かの原因でこれらの機器に電流が漏れた場合に、それを大地に逃がして人間が感電するのを防ぐためです。

 IGFETなどの回路での接地は本当に大地につなぐというより、電位の基準はここであるということを示す意味で使われます。実際に電池で動作させる回路では大地の電位は関係ありません。機器の金属ケースなど比較的大きな導体部分をアースとみなし、そこを電位の基準点とします。

 図9-2(A)図9-1を回路図で示したものです。IGFETはこのような記号で表されます。抵抗器はギザギザで示します。電源は電池を書くのやめ、○で示す端子の電位で示しています。この電位の基準はすべてグランドです。ゲートにはグランドに対してVgになるような電源をつなぎ、ソースはグランド電位につなぎます。ドレインには負荷抵抗をつなぎ、その先をグランドに対してVという電源につなぎます。ドレイン電圧Vdsの端子はここに電源をつなぐという意味ではなく、この端子とグランドの間の電圧を計るとVdsですという意味です。図9-2(A)図9-1をそのまま記号で置き換えたものですが、普通の回路図では図9-2(B)のような書き方がされます。左側から入力信号が入り、右側に出力信号が出て行くという配置になっています。

 

(1)米国特許3056888号

(2)米国特許3102230号