産業/標準化

15.JISの実例(8)-品質保証関連-

 ここまでは主に工業製品の規格についての例をみてきました。しかしこれ以外の対象に対しても標準化が行われています。その例をみてみます。

 前項でも少し触れましたが、「信頼性の話」のページで引用しているJIS C 60068シリーズの「環境試験方法」の規格があります。これも前項で触れましたが、C 60000番台の規格はIEC規格の翻訳で、番号もIECに揃えたシリーズで、この60068には50を超える多数の規格がすでに並んでいます。

 このような試験によって故障の発生頻度から対象製品を出荷してもよいかどうかの合否判定をするのが最終目的です。このような試験は抜き取りによって行わなければならないので、ひとまとまりの製品(ロット)から抜き取って試験した結果から、そのロットの合否を判定する方法が必要です。これには条件によっていろいろな考え方があり、その方法も標準化されています。この規格がJIS Z 9000番台のはじめの方にあり、JIS Z 9015はISO 2859という国際規格に対応しています。そのタイトルは「計数値検査に対する抜取検査手順」で第0部から第3部に分かれています。第0部は「抜取検査システム序論」、第1部はロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式、等々となっています。

 第0部の2.1 「抜取検査のねらい」のところに、「相互に合意した水準以上の品質で生産者がロットを提出していることを確かめ、合格可能な品質のロットを消費者が受け入れられるようにすること」がねらいであると記されています。品質というのは生産者と消費者の間で利害が対立するものなので、両者が受け入れ可能な品質水準を決める検査を標準化することには大きな意味があると言えます。

 この規格はいずれも長文で詳細な説明がなされており、上記のようなねらいを達成できるものになっていると思われます。

 品質保証にとっては生産者側の姿勢が大変重要ですが、組織としてのマネジメント(マネジメントシステム)を標準化したISO 9000シリーズは大変よく知られています。JISにはこれを翻訳した日本語の規格が設けられています。

 JIS Q 9000「品質マネジメントシステム-基本及び用語」、9001「同-要求事項」、9004「同-パフォーマンス改善の指針」がこれに該当しますが、JIS Q 9001:2015がその中心をなすと言えます。

 JIS Q 9000によれば、品質の定義は「対象に本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たしている程度」ということになります。「対象」とは製品とかサービスとかプロセス等々のことを意味します。

 またマネジメントシステムとは「方針及び目標、並びにその目標を達成するためのプロセスを確立するための、相互に関連する、又は相互に作用する、組織の一連の要素」と定義され、品質マネジメントシステムは「品質に関するマネジメントシステムの一部」ということになります。

 JIS Q 9001:2015は10箇条と2つの附属書からなっていますが、国際規格はどうもわかりやすくありません。一番前に概要説明のような0という項が設けられています。ここにこの規定の内容が完結にまとめられています。

 0.2に「品質マネジメントシステムの原則」とは顧客重視、リーダーシップ、人々の積極的参加、プロセスアプローチ、改善、客観的事実に基づく意思決定、関係性管理、の事項を言うと記されています。

 0.3は「プロセスアプローチ」でこの0.3.2に品質マネジメントシステムに適用される「PDCAサイクル」の説明が図示を含めて記載されています。

 顧客要求事項を実現するために、図15-1に示すように、計画(Plan)を立て、これを運用(Do)し、その結果を評価(Check)し、改善(Act)をするために再度、計画を立てる、という循環を経営トップのリーダーシップのもとに行う、というのが品質マネジメントシステムのPDCAサイクルです。

 この規格の求める重要な点は以上のようなシステムの文書化です。すべてを文書として残すことにより、その審査が可能になります。ISO 9000シリーズにはその認証を行う認証機関が存在します。認証機関は文書を中心とした審査を行い、これによって組織ごとの認証を行います。認証を受けた組織はその旨表示することができ、顧客の要求を重視した品質を提供する組織であることを示すことができます。

 同様にISO 14000:2015という規格があります。これは「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」の規格です。JISではこれを翻訳したJIS Q 14001:2016が制定されています。構成はJIS Q 9001とほぼ対応していて10箇条と2つの附属書からなっています。

 0.2にこの規格の目的が、「社会経済的ニーズとバランスをとりながら、環境を保護し、変化する環境状態に対応するための枠組みを組織に提供すること」であると規定されています。

 ちなみに「環境」とは3.2.1に定義されていて、「大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人およびその相互関係を含む、組織の活動をとりまくもの」となっています。

 こちらには顧客重視という観点はありませんが、概ね品質に対する取り組みに対応したマネジメントシステムが規定されています。