産業/標準化

14.JISの実例(7)-半導体デバイス(3)太陽電池-

 もう一つ、半導体デバイスの規格として太陽電池について触れます。太陽電池のJISはかなり多くあります、ありましたと言ったほうがいいかもしれません。すべてJIS C 8900番台に並んでいるので、探しやすくなっています。関連した規格の数はかなり多いですが、かつてあった太陽電池セル、モジュールそのものとその測定方法に関する規格は最近廃止になったものが多いようです。

 すでにセルとかモジュールといった太陽電池特有の用語が出てきましたが、用語にかんしては JIS C 8960:2012「太陽光発電用語」という規格があります。これによると「セル」が太陽電池の最小単位、つまりセル1個で太陽電池の機能をもつということです。「モジュール」は定義によると、「太陽電池セル又は太陽電池サブモジュールを、耐環境性のために外囲器に封入し、かつ規定の出力をもたせた最小単位の発電ユニット」となっていて、複数のセルを並べるという要件はなく、耐環境性が重要な要素となっていることがわかります(「太陽電池」48項参照)。

 このモジュールに関しては JIS C 8918 「結晶系太陽電池モジュール」、 JIS C 8939 「薄膜太陽電池モジュール」 があります。両方とも対応国際規格のない日本の独自規格です。対をなすように同じ10箇条で構成されています。

 7.性能、は7.1電気的性能、7.2機械的性能、7.3耐候性に分かれ、それぞれ3つずつの性能項目が挙げられています。いずれも結晶系の方はJIS C 8990、薄膜系の方はJIS C 8991を引用しています。ところが2021年末の時点で、これらの規格は存在しなくなっています。つぎの規格の見直しの機会に訂正されるはずですが、これらに替わる規格はJIS C 61215です。

 JIS C 61215の「まえがき」をみると、「JIS C 8990:2009及びJIS C 8991:2011は廃止され、それらの一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。」となっています。さらにまえがきには、このJIS C 61215には第1部と第2部があり、第1部はさらに4つに分かれていることが書かれています。

 JIS C 61215-1:2020をみると、タイトルは「地上設置の太陽電池(PV)モジュール-設計適格性確認及び形式認証-第1部:試験要求事項」、英文タイトルは"Terrestrial photovoltaic (PV) modules-Design qualification and type approval-Part 1: Test requirements"です。さらに第2部は、JIS C 61215-2:2020 第2部:試験方法(Part 2: Test procedures)であり、試験方法を具体的に規定しています。

 第1部の序文には、この規格は「IEC 61215-1を基とし、」一部を変更して作成されたことが書かれています。「信頼性の話」のところで引用したJIS C 60068の環境試験方法のシリーズも同様ですが、JISのCは、最近IEC規格に対応する一連のJISを制定する場合にIECの番号に揃えて60000番台の番号を付けることが行われています。

 なお、第1部にはさらに1-1~1-4の4つの枝番があり、1-1が結晶シリコン太陽電池、1-2~1-4は3種類の薄膜太陽電池に関する特別要求事項になっています。

 このJIS C 61215は太陽電池モジュールの試験方法を規定する規格なので、もう少し内容をみてみましょう。まず第1部ですが、11箇条と附属書JAからなっています。1.適用範囲、には、ここで実施する試験の目的は、PVモジュールの電気的、熱的特性の決定と、PVモジュールが一般的な屋外の気候にさらされても耐えることを確認することにあるとしています。6.試験、の詳細は第2部に規定されますが、ここでは試験のタイトルと試験条件を一覧表にまとめて示し、試験のフローを図示しています。7.合格基準には、出力及び電気回路、目視欠陥、電気安全のそれぞれについて合格基準を規定しています。

 一方、第2部ですが、18の試験(IECの規格では19ありますが、うち1つは不採用)を挙げ、それぞれについての具体的方法を規定しています。それぞれの試験について、目的、試験装置、試験条件、手順、要求事項が規定されています。

 試験の項目は、目視検査に始まり、最大出力、絶縁性能、出力などの温度係数、基準状態及び低放射照度における性能といった性能に関する試験と、屋外暴露試験、紫外線前処理、温度サイクル、結露凍結、高温高湿、湿潤漏れ電流、といった耐候性試験、比較的新しく注目されたホットスポット耐久試験とバイパスダイオード試験(太陽電池、54項参照)、さらに端子強度試験、機械的静荷重試験、降ひょう(雹)試験といった機械的試験が規定されており、これに光出力を安定化させる照射試験が加えられています。

 このほか、太陽電池に関するJISの多くは、8950番台の太陽電池アレイと8961番以降の発電システムに関するものになっています。

 JIS C 8951:2011「太陽電池アレイ通則」は国内独自規格です。モジュールとアレイの関係を図面(図14-1はこれを改変したもの)を使ってわかりやすく示しています。文言としての「太陽電池アレイ」の定義は上記のJIS C 8960にも示されていますが、要はモジュールを複数、架台などの支持体に載せたものを言います。このため支持体自体の規定(8955,56)も含まれることになり、半導体デバイスからは離れた建造物に近い技術内容となります。規格ではサブアレイと並べたものをアレイと呼び、上記図面にもそのことが示されていますが、両者の違いは規模だけで本質的な差異はないと思われます。

 上の写真は高層集合住宅の屋上に太陽電池アレイを設置した例で、よく見かけるものです。規格には地表に多数のアレイを並べたフィールドアレイが載っていますが、建物単位の発電装置も国内では一般的です。

 

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