産業/標準化

7.規格の調べ方

 ここまで標準化について一般的な知識を説明してきました。しかしこれだけでは規格とはどういうものか、何が記されているのかについての実感が浮かばないと思います。そこで以下の項で、実例をいくつか紹介してみようと思います。

 それに先だってそれではどうやって具体的な規格を調べるのか、その方法を示しておきます。

 JISは日本産業標準調査会(JISC)のウェブサイトで検索することができます。これが公式のデータベースです。

 サイトを開くと最初のページの下の方に「データベース検索」という欄があり、その中に「JIS検索」があります。これをクリックすると検索したい情報を入力する欄が現れます。JISの番号が分かっていれば「JIS規格番号からJISを検索」の欄に英字とそれに続く番号を入力します。分からない場合は言葉を入れてテキスト検索もできます。これは2種類あって一つは「JIS規格名称」です。つまりJISの標題を正確でなく一部でもよいので入力します。もう一つは「JIS規格に使用されている単語」です。いわゆる全文検索です。しかしこのテキスト検索は一般的な語ではヒットする規格が多すぎてエラーになってしまい、特殊な語は少し違うとまったくヒットしないので、できれば番号を他で調べて番号検索をする方がよいと思います。

 JISの番号はWikipedeaに「JISの一覧」というページがありますので、そこで探すのが便利です。JISはつぎの表に示すように技術分野ごとにA~Zまでの19の分野(I,J,N,O,U,V,Yはない)に分類されています。JISの番号はこの符号を付けて例えばJIS C 8303:2007といったように指定されています。探そうとしている規格の技術分野は大体分かると思いますので、その分野の規格の「名称」を片っ端から見ていけば、それらしきものを見つけることができると思います。この一覧表には廃止になった規格も示されていますが、これはJISCのデータベースでは見ることができません。またこの一覧表は公式のものではないので、確実にアップデートされているという保証はありません。最近制定された新しい規格は載っていないことがありますし、表に載っていてもすでに廃止されたものが残っている場合もあります。その点は注意が必要で、JISCの公式ページで確認する必要があります。

 A 土木建築   M  鉱山
 B  一般機械  P  パルプ及び紙
 C  電子機器及び電気機器  Q  管理システム
 D  自動車  R  窯業
 E  鉄道  S  日用品
 F  船舶  T  医療安全用具
 G  鉄鋼  W  航空
 H  非鉄金属  X  情報処理
 K  化学  Z  その他
 L  繊維    

 

 JISCのサイトに戻って、閲覧したい規格の規格番号を入力します。枠内に入力するのは技術分野を示す英字1文字と4~6桁の番号でスペースは不要です。上の例ならC8303とだけ入力します。該当する番号の規格があれば、その規格の番号と名称が表示されます。ただし廃止になっている規格は、検索しても存在しないというエラーになります。規格番号にはハイフンのついた枝番がある場合があり、-1なら第1部、-2なら第2部、というように呼ばれます。この場合はハイフンの前までの番号が一致するすべての枝番の規格のタイトルが表示されます。

 規格の内容を見たい場合は表示された規格番号をクリックします。しかしJISは著作権があるので、自由に使うことができません。ただし個人でもメールアドレスなど必要事項を入力すればIDが与えられて簡単に登録ができます。以後このIDと決めたパスワードを入力すれば規格の全文を表示させることができます。

 ただしこのとき警告表示が出るように、できるのはあくまで閲覧だけです。ダウンロードはもちろん印刷もできないようになっています。1ページごとのスクリーンショットはとろうと思えばとることができますが、各ページの下地に日付、閲覧者のIDとメールアドレスが透かしのように入っていますので、どこかに貼り付ければ誰がやったのか一目瞭然になってしまいます。

 印刷した規格が欲しい場合は規格ごとに購入することができます。また「JISハンドブック」という技術分野ごとにまとめた書籍も数年に1回出版されています。企業などでは関連分野のハンドブックを備えていることが多いと思いますが、個人で買うにはかなり高価です。

 この他、日本規格協会(JSA)という団体もJISを保管しています。東京港区の本部を訪ねれば、JISを無料で閲覧できますが、コピーや写真撮影などは禁じられています。またウェブサイト上でJISの番号や表題の用語で検索することもできますが、規格の内容を無料で読むことはできません。高額な冊子を購入する必要があります。この他、国会図書館もJISを保管していて、出向けば閲覧は可能です。

 ISOやIECなど国際規格はどうすればよいでしょうか。ISOは現在約20000の規格が制定されており、ISO 1から通し番号が付けられています。規格の番号と名称を調べるにはWIKIPEDIAの「国際標準化機構が定める国際標準一覧」が便利です(ただしISOのみでIECはありません)。国際規格は英語とフランス語で書かれていますが、ここでは日本語訳した名称が表示されます。

 どのような規格が制定されているかは、公式にはISOのホームページから"ISO Store"というページに行って規格を検索することになります。IECの場合もホームページから"Webstore"に行くと検索ができます。しかしこれらはその名の通り、規格文書を購入するためのページで、内容を見ることはできません。

 国内で国際規格のライブラリをもっている機関としては、上記の日本規格協会(JSA)があります。東京港区の本部を訪ねれば、JIS同様に無料で閲覧できますが、コピーや写真撮影などが禁じられている点は同じです。JSAのウェブサイト上でもJIS同様に、ISOやIECなどの規格を番号や表題の用語で検索することができます。しかし規格の内容を読むには、高額な冊子を購入する必要があります。

 日本で重要とされる国際規格の多くは翻訳されてJISになっているので、無理に原語の規格を入手する必要はそれほどないと思われます。