科学・基礎/半導体物理学
43.まとめ

 半導体物理の主題は半導体結晶中での電子の運動を解析することです。運動の解析を古典力学によって行う古典電子論では物質の個性を説明することはできませんでしたが、量子力学によってこれが理解できるようになりました。

 しかしどちらにしても多数の原子からなる結晶中での多数の電子の運動を計算することは難しく、なんらかの近似計算を行わざるを得ません。ここで紹介した量子力学を適用する際の近似計算はかなり大胆なもので、ここまでしては実情を反映できなくなるのではないかと思われるほどです。しかし実際には半導体の特性をかなり説明でき、計算の結果得られる数値も実験結果とよく一致することがわかっています。

 ここではより具体的物質の性質を反映できるような計算は示していません。これを行うにはコンピュータによる数値計算が必要です。個々の物質の結晶構造やその他の物性と計算結果の比較は興味深いものがありますが、あまりに専門的になるので、立ち入るのを止めました。

 なお、ここでは単一の物質としての半導体の性質を対象にしています。しかし半導体のデバイス応用としてはpn接合や金属-半導体接触など複数の物質からなる系を欠かすことができません。これらについては「半導体デバイスの物理」の方で取り上げます。