科学・基礎/半導体物理学
27.エネルギーギャップの意味
周期ポテンシャルがある場合、電子のエネルギーにギャップが生じることは数学的に導かれましたが、このギャップはどんな意味をもっているのでしょうか。
ギャップは波数 \(k\) が \[k= \frac{n\pi }{a}\] のところで生じます。波長 \(\lambda \) は \(\lambda = 2\pi /k \) ですから、波長で言えばギャップは \[\lambda = \frac{2a}{n}\] のところで生じます。\(n=1\) のとき、電子の波長は原子の間隔 \(a\) の2倍になっていることがわかります。ということは隣り合う距離 \(a\) の間隔の原子からそれぞれ反射した波は入射波と干渉することになります。
前に考えたのと同じように \(n=0\) と \(n=1\) の場合だけを考えると1次元の波動関数 \(\psi \left ( x \right )\) は \[\psi \left ( x \right )= A_{0}\exp \left ( ikx \right )+A_{1}\exp \left \lbrace ix\left ( k-\frac{2\pi }{a} \right ) \right \rbrace\] です。ただし \[\frac{A_{1}}{A_{0}}=\pm \frac{V_{1}}{\left | V_{1} \right |}= \pm 1\] です。ここで \(V_{1}\) は前項で示したように周期的ポテンシャルエネルギーをフーリエ展開したときの \(n=1\) の係数です。
波動関数は \(k=\pi/a\) のとき、 \[\begin{align} &\exp \left ( ikx \right ) = \exp \left ( i\frac{\pi }{a} x\right ) \\ &\exp \left \{ ix\left ( k-\frac{2\pi }{a} \right ) \right \} = \exp \left ( -i\frac{\pi }{a} x\right )\end{align}\] の2つの成分を持ちます。これらが結晶に入射すると、原子が間隔 \(a\) で並んでいるところにその間隔の2倍の波長をもつ波が入射したことになりますから、干渉が生じ定在波が発生します。その波形は \(\cos \left ( \pi x/a \right )\) と \(\sin \left( \pi x/a \right )\) とになります。このときエネルギーは \(\cos\) に対して \[E_{1}= \frac{\hbar^{2}}{2m} \left ( \frac{\pi }{a}\right )^{2}-\left | V_{1} \right |\] となり、\(\sin\) に対して \[E_{1}= \frac{\hbar^{2}}{2m} \left ( \frac{\pi }{a}\right )^{2}+\left | V_{1} \right |\] となって、両者の間に \(2V_{1}\) の差が生じます。これがエネルギーギャップとなると考えられます。したがってエネルギーギャップの大きさは周期的ポテンシャルエネルギーの振幅に依存していると言えます。
なお、電子の存在確率は \(\left | \psi \right |^{2}\) で表されますから \[\begin{gather}\left | \psi _{1} \right |^{2}\sim \cos ^{2}\frac{\pi }{a}x \\ \left | \psi _{2} \right |^{2}\sim \sin ^{2}\frac{\pi }{a}x\end{gather}\] の2通りになります。これらはともに周期 \(a\) をもつので、電子の存在する確率はポテンシャルの周期に等しい周期をもち、位相が90°異なる2通りになることを示しています。図27-1はこの様子を示したものです。