産業/信頼性
3.故障の発生確率

 寿命とは故障が起こるまでの時間を意味しますが、それではどんな場合に半導体デバイスが故障したと判断するでしょうか。もっとも単純に考えればまったく動作しなくなったときです。発光デバイスなら電源をつないでもまったく発光しない場合、トランジスタなら電源をつないでも電流がまったく流れないなどの場合です。しかしそこまで至らなくても特性が低下してしまう場合があります。半導体デバイスの製品には特性の規格があります。半導体デバイスの特性は同じ条件で製造してもある程度のばらつきがあります。そこで規格は最低限満たすべき特性を定めている場合が多いはずです。この最低限満たすべき特性を満たさなくなったとき、これを故障と見なします。

 さて故障の判断基準が定まったとすると、\(n\) 個の製品サンプルを用意し、使用開始から時間 \(t\) が経過したところで何個が故障に至ったかのデータを取ることができます。このデータをもとに寿命を理論的に推定できるようになります。ここでは架空のものですが、具体的なデータを例に話を進めます。

 ここではそれぞれ20個(\(n=20\))の製品(試料、サンプル)を同じ条件で動作させたとします。そして故障が発生した試験開始からの時間 \(t\) を記録していきます。その結果、一例として図3-1のようなデータが得られたとします。縦軸の1~20は試料の番号で横軸は故障が発生した時間です。緑色の線が生存期間を示し、×印の時点で故障が発生したことを示しています。

 図のデータを含め、下表のように3種類を用意しました。表では \(t=0\) から1000(単位はとくに指定しませんが、「時間」と考えてもよいです)までを10等分して \(i=1\) から10の区間に番号を付けておきます(この区間の時間:\(\Delta t=100\))。各区間に発生した故障の数を \(r_{i}\) とし、累積の故障数を \(x_{i}\) とします。    \[x_{i}=\sum_{1}^{i}r_{i}\]

 なお、実際の試験では全試料が故障するまで試験を続けることが難しい場合があります。非常に長時間を要することがあるからです。そこで初めから時間を定め、一定時間が経過したら残存する試料があっても試験を打ち切る、あるいはある個数が故障したらその時点で試験を打ち切るという方法が用いられる場合もあります。むしろこの方が普通かもしれません。ここで示す各例では一部の試料が故障せずに生き残った場合を例とし、一定時間打ち切り( \(t=1000\) で試験終了)の例を採用しました。 

 図3-2は区間 \(i\) で故障しないで残っている数(残存数)\(n_{i}\)、すなわち    \[n_{i}=n-x_{i}\] の時間依存性を示すグラフですが、データ1(青色)は使用開始後早い段階で多くの故障が発生する場合です。データ3(緑色)は逆に長い時間が経ってから故障が多く起こる場合です。データ2(赤色)はこの中間的な場合です。

 さてここで区間 \(i\) で起こる故障の確率を考えます。全数 \(n\) 個のうち \(r_{i}\) 個が故障したので確率は \(r_{i}/n\) です。これを単位時間当たりにしたものを確率密度といいます。つまり \(\Delta t\) で割ります。これを単位:%/時間 (\(t\)) で表すと    \[f_{i}=\frac{r_{i}}{n}\cdot \frac{1}{\Delta t}\times 100\] となります。 この \(f_{i}\) を故障確率密度と言います。

 これをもとに累積の故障確率 \(F_{i}\)を求めると    \[F_{i}=\sum_{1}^{i}f_{i}\Delta t\] となります。これは \(n_{i}\) を使って    \[F_{i}=\left \{ 1-\frac{n_{i}}{n} \right \}\times 100\] と簡単に書くことができます。累積故障確率 \(F_{i}\) の単位は%です。この上記数値例による \(F_{i}\) を図3-3に示します。

 逆に故障が起こらなかった割合は    \[R_{i}=1-F_{i}=\frac{n_{i}}{n}\times 100\] と書けます。この \(R_{i}\) を信頼度(%)と呼びます。

 上記の \(f_{i}\) の確率は全数 \(n\) に対するものでしたが、実際には時間経過とともに故障しないで残っている個数は減ってきます。この減った個数に対する故障の確率を故障率 \(\lambda_{i}\) と言います。単位は%/時間 (\(t\)) とします。式で表すと    \[\lambda_{i}=\frac{f_{i}}{R_{i-1}}=\frac{r_{i}}{n_{i-1}}\cdot \frac{1}{\Delta t}\times 100\] となります。

 数値例を図3-4に示します。縦軸は \(\lambda_{i}\) に \(\Delta t\) をかけて示しましたが、この例では \(\Delta t=100\)(定数)ですから \(\lambda_{i}\) の変化には影響がなく単に表の \(\lambda_{i}\) の値の100倍になるだけで、単位に時間が入らないのでわかりやすくなると思います。なお、試料数が少ない場合、データがばらつくのは仕方がありません。特徴をわかりやすくするために図3-4の故障率は長時間側の一部の点を省いて示してあります。

 とくに図3-3を参照して、各データの特徴をまとめるとつぎのようになります。

  データ1:初期に故障の発生が多く、時間とともに故障率が低下しています。

  データ2:故障率がほぼ一定です。

  データ3:故障率が時間の経過とともに増加しています。

 バスタブ曲線を思い出すと、データ1は初期故障、データ2は偶発故障、データ3は摩耗故障の特性に相当していることがわかります。

データ1
 \(i\)  \(t_i\)  \(r_i\)  \(x_i\)  \(n_i\)  \(f_i \left (\%/t \right )\)  \(F_i \left (\% \right )\)  \(R_i \left (\% \right )\)  \(\lambda_i \left (\%/t \right )\)
 1 100  10  10 10 0.50 50 50 0.500
 2  200  3  13  7  0.15  65  35  0.300
 3  300  2  15  5  0.10  75  25 0.286
 4  400  1  16  4  0.05  80  20 0.200
 5 500  0  16  4  0.00  80  20  0.000
 6 600  1  17  3 0.05  85  15 0.250
 7  700  0  17  3  0.00  85  15  0.000
 8 800  0 17  3  0.00  85  15 0.000
 9 900  0 17  3  0.00  85  15  0.000
 10 1000  0  17  3  0.00  85  15  0.000
データ2
 \(i\)  \(t_i\)  \(r_i\)  \(x_i\)  \(n_i\)  \(f_i \left (\%/t \right )\)  \(F_i \left (\% \right )\)  \(R_i \left (\% \right )\)  \(\lambda_i \left (\%/t \right )\)
 1 100  4  4 16 0.20 20 80 0.200
 2  200  4  8 12  0.20  40  60  0.250
 3  300  2  10 10  0.10  50  50 0.167
 4  400  2  12  8  0.10  60  40 0.200
 5 500  2  14  6  0.10  70  30  0.250
 6 600  2  16  4 0.10  80  20 0.333
 7  700  1  17  3  0.05  85  15  0.250
 8 800  1 18  2  0.05  90  10 0.333
 9 900  0 18  2  0.00  90  10  0.000
 10 1000  0  18  2  0.00  90  10  0.000

データ3
 \(i\)  \(t_i\)  \(r_i\)  \(x_i\)  \(n_i\)  \(f_i \left (\%/t \right )\)  \(F_i \left (\% \right )\)  \(R_i \left (\% \right )\)  \(\lambda_i \left (\%/t \right )\)
 1 100  1  1 19 0.05 5 95 0.050
 2  200  2  3  17  0.10  15  85  0.105
 3  300  3  6  14  0.15  30  70 0.176
 4  400  4  10  10  0.20  50  50 0.286
 5 500  3  13  7  0.15  65  35  0.300
 6 600  4  17  3 0.20  85  15 0.571
 7  700 1  18  2  0.05  90  10  0.333
 8 800  0 18  2  0.00  90  10 0.000
 9 900  1 19  1  0.05  95  5  0.500
 10 1000  0  19  1  0.00  95  5  0.000