産業/信頼性

4.故障確率密度関数と故障率関数

 前項では模擬データから故障率を求めましたが、議論を一般的なものにするためには、試料数 \(n\) が非常に大きく、時間間隔 \(\Delta t\) が非常に短い極限を考える必要があります。すると故障確率密度 \(f_{i}\) や故障率 \(\lambda_{i}\) は時間に対して連続関数になります。

 前項の累積故障確率 \(F_{i}\) と信頼度 \(R_{i}\) は \(r_{i}\) をとくに区間を区切らず使用開始から任意の時間 \(t\) までの故障数 \(r\left( t\right )\) に置き換えれば、    \[\begin{align} F\left ( t\right ) &= \frac{r\left ( t\right )}{n} \\    R\left ( t \right ) &= \frac{n-r\left ( t\right )}{n} \end{align}\] という連続関数で表せます。ここで \(F\left ( t\right )\) を故障分布関数、\(R\left ( t\right )\) を信頼度関数と呼びます。

 一方、\(f_{i}\) と \(\lambda_{i}\) を連続関数で表すには、区間 \(i\) に対応する時間 \(t\) 経過後の時間幅 \(\Delta t\) を考えると、時間 \(t\) から \(t+\Delta t\) までの間の故障数は    \[r\left ( t+\Delta t \right )-r\left ( t \right )\] で表されるので、故障確率密度関数 \(f\left ( t\right )\) は    \[f\left (t \right )=\frac{r\left ( t+\Delta t \right )-r\left ( t \right )}{n}\cdot \frac{1}{\Delta t}\] となります。\(\Delta t\rightarrow 0\) の極限をとると、微分の定義から    \[f\left ( t\right )=\frac{1}{n}\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} t}\] となるので、\(f\left ( t\right )\) と \(F\left ( t\right )\)、\(R\left ( t\right )\) の関係は    \[f\left ( t \right )=\frac{\mathrm{d} F}{\mathrm{d} t}=-\frac{\mathrm{d} R}{\mathrm{d} t}\] となります。両辺を積分すると    \[\begin{align} F\left ( t \right ) &= \int_{0}^{t}f\left ( t \right )\mathrm{d}t \\ R\left ( t \right ) &= \int_{t}^{\infty } f\left ( t \right )\mathrm{d}t \end{align}\] となります。\(F\left ( t\right )\) は時間 \(t\) までに故障する確率に対応しますから、積分区間は 0 から \(t\) までとなり、\(R\left ( t\right )\) は \(t\) までに故障しない確率ですから \(t\) 以降が積分区間となります。

 故障率関数 \(\lambda \left ( t\right )\)は\(\Delta t\) の間の故障数の、時間 \(t\) までに故障せずに残った数に対する比でしたから    \[\lambda \left ( t\right )=\frac{r\left ( t+\Delta t\right )-r\left ( t \right )}{n-r\left ( t \right )}\cdot \frac{1}{\Delta t}\] と書けます。\(f\left ( t\right )\) のときと同様に \(\Delta t \rightarrow 0\) の極限をとると    \[\lambda \left ( t\right ) =\frac{nf\left ( t\right )}{n-r\left ( t\right )}\] となります。これは    \[\lambda \left ( t\right )=\frac{f\left ( t\right )}{R\left ( t\right )}=\frac{f\left ( t \right )}{1-F\left ( t\right )}\] と書き直せます。さらにこれを上の関係を使って書き直すと    \[\lambda \left ( t\right )=-\frac{1}{R}\cdot \frac{\mathrm{d} R}{\mathrm{d} t}\] となります。積分公式    \[\ln y=\int\frac{1}{y}\cdot \frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d} x}\mathrm{d}x\] を使えば    \[\lambda \left ( t\right )=-\frac{\mathrm{d} \ln R\left ( t\right )}{\mathrm{d} t}\] という関係が得られます。

 以上で時間に対する連続関数としての故障確率密度と故障率が得られました。