光デバイス/太陽電池

55.太陽電池モジュール、パネルの評価、監視

 前項で太陽電池のモジュールあるいはパネルとしての劣化現象とその解決策について説明しました。モジュールあるいはパネルの形態になってしまうと、例え劣化や故障が発生しても、個々のセルを取り出して評価することはできません。このためモジュールやパネルの形態のまま、どのような劣化や故障が生じているかを評価する必要があります。さらに大規模な発電システムの場合、システムが動作状態のまま劣化や故障が生じていないか監視する必要もあります。

 モジュール、パネルに関する評価方法は大きく分けて電気的な評価と光学的な評価に分けられます。それぞれについて考えてみましょう。

(1)電気的特性

 太陽電池セルの出力は電流-電圧特性によって測定できます。セルが複数直列接続されたストリングについても同様に電流-電圧特性が測定できます。個々のセルの特性は実際にはいくらかのばらつきがありますが、概略同等のはずです。その場合、ストリングの短絡電流は基本的に1個のセルと同等ですが、開放電圧は1個のセルの開放電圧の直列接続されたセルの数倍となります。したがって電流-電圧特性は概略図55-1の青線で示すようになります。

 ホットスポットが発生した場合、電流-電圧特性はどう変化するかを考えます。影になった部分のセルは前項でも説明したように単なるpn接合ダイオードとなります。逆方向に接続されている状態ですから、このpn接合ダイオードの電流-電圧特性は図55-2のようになります。

 ストリングのなかに1つだけpn接合ダイオードが逆方向に直列接続されていると、電流-電圧特性は、図55-1の赤線で示すように電圧の大きい部分が削れたような形に変化するはずです。したがって電流-電圧特性がこのような形に変化することからホットスポットの発生を検知できると考えられます。

 実際にはバイパスダイオードが接続されている場合が多いですが、その場合もホットスポットが発生した場合にはバイパスダイオードの特性が重畳した電流-電圧特性になりますから、検知ができると考えられます(1)

 この電流-電圧特性はホットスポット以外にもストリングのどこかに異常が発生した場合に変化するので、異常検出の手段として有用です(2)

(2)光学的特性

・エレクトロルミネッセンス pn接合に順方向電流を流すと発光が起こる、というのは発光ダイオードの原理です。太陽電池もpn接合なので同じことが起こるはずですが、シリコンは間接遷移型半導体なので、発光は起こらないとされています。しかしこれは発光ダイオードとして使えないという話で、間接遷移型でも非常に効率が低いので微弱ですが発光は起こります。この発光、エレクトロルミネッセンス(EL)を利用して太陽電池を評価しようという提案がなされました(3)

 シリコンの場合、発光波長は1100nm付近であり、CCDカメラなど赤外域に感度のある受光素子で十分検知できます。発光は欠陥のないセルでは強く、欠陥があると弱まります。これによって欠陥のあるセルがストリング中にあれば特定できることになります。

・赤外線検出  上記のEL測定は動作時の結線とは異なる電流注入用の結線をしなければならないため、動作状態のままで評価することはできません。これに対してホットスポットのように発熱を伴う劣化や故障は動作中に赤外線を検出することによってその部位を検出することができます(2)。赤外線カメラ(CCDカメラ)によって太陽電池パネルを撮影することによって問題のあるセルを特定できますが、メガソーラーのような大型の設備の場合には撮影すること自体に困難が伴います。これを解決する手段として、近年、ドローンを使うことが提案されています(4)。空中からの撮影を比較的手軽に撮影でき、結果もリアルタイムで観測できるので、今後一般化するように思われます。

(1)特開2010-245410号

(2)特開2009-032743号

(3)国際公開第2005/021912号

(4)特開2017-078575号

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