光デバイス/太陽電池
52.太陽光発電システムの構成(その2)
前項に続いて商用電源系統との連携についてもう少し説明します。
発電・送電システムが一つの発電所から家庭などの負荷に電力を供給する系統であれば話は簡単です。基本的には1個の電池に豆電球(古いというならLEDでもいいですが)をつないで光らせる回路と変わりません。
しかし現代では発電所は1つではなく複数あり、これらが連携して非常に多くの負荷に電力を供給しています。こういう場合、ある発電所で発電された電力がどう流れてどこの負荷で消費されているのかは非常に複雑でよくわかりません。このような電力の流れのことを電力潮流ということがありますが、この電力潮流がうまくコントロールされているので、電力が問題なく利用されているのです。このコントロールが乱れると停電事故が発生したりすることになるので、電力潮流制御という技術は非常に重要です。
各家庭で太陽光発電を行い、これを商用電源系統に接続するということは、小さい出力ながら一発電所としてこの電力潮流のなかに入ることですから、系統に合わせた調整が必要となります。大雑把には前項の図51-1のようなシステムが使われます。
太陽電池パネルで発電された電力はインバータに接続され、交流に変換されます。このインバータは制御装置によってコントロールされています。発電された電力は家庭内の電気機器(負荷)で使用されますが、余れば電力会社、つまり商用電源系統に供給されます。前項では系統の接続、切り離しを行うために単純にスイッチを示しましたが、これは一般には分電盤と呼ばれる設備の機能です。もう少し具体的にどんなことが行われているのか、中身を詳しく見てみましょう。図52-1はこの太陽光発電システムと分電盤の中身の概略を示しています(1)。
太陽電池パネルは電力変換器に接続されています。この電力変換器は基本的にはインバータです。電源系統ACに連携させる場合に重要なことはインバータで変換した交流の位相が電源系統の位相と一致していなければならないということです。位相を一致させるというのは交流電圧が周期的に変化している山谷の時間を一致させるということです。これが合っていないと電力は損失し、電源系統にうまく供給されません。
この位相を一致させるには1秒間に50回か60回振動している交流電圧の瞬間的変化を知る必要があります。このため電源系統側の電圧の位相を調べているのが連携保護回路です。その結果を制御回路に送り、制御回路はそれに基づいたタイミングでインバータが動くようにコントロールします。
また、系統側の電力供給が停止(停電)する場合も想定する必要があります。これは系統側での事故、あるいはメンテナンス工事等による場合ですから、太陽光発電側から不用意に電力を戻すことはさらなる事故に繋がりかねません。電源系統側にこのような停電事故などが発生した場合も連携保護回路が検知し、開閉器(スイッチ)を制御してインバータを切り離すはたらきをします。このようなタイミング調整や切断機能を備えたインバータをパワーコンディショナーと呼ぶことがありますが、これは和製英語で日本国内でのみ使われているようです。
以上の発電システムと電源系統の間に分電盤があります。分電盤というのは家庭にあるのを見ればわかるように、要はブレーカの集まりで、異常から機器を保護するのが役目です。図ではリミッタ、主幹ブレーカ、連携ブレーカ、分岐ブレーカがあります。
リミッタ、主幹ブレーカ、分岐ブレーカは太陽光発電を行っていないシステムでも使われます。全体として過大な電流が流れたらリミッタ、主幹ブレーカが切断され、特定の範囲に過大電流が流れたら分岐ブレーカが切断されます。連携ブレーカは太陽光発電システムを分電盤と完全に切り離すことができるように設けられています。
各ブレーカが切断されていないで、インバータの出力の位相が正しく制御されていれば、太陽電池が発電した電力は分岐ブレーカの先にある家庭内の機器によって消費されます。さらに電力が余っていれば、それは電源系統側に流れ込むことができます。
一方、夜間や天候などの影響で太陽光発電がされていないか少なく、家庭内の機器を動作させるのに不足する場合は、電源系統側から電力が供給されることになります。
電力計は互いに逆向きの電力を測定するようになっています。太陽光発電の量が不足し、電源系統から電力が流れ込んでいる場合はその量を計り、いわゆる買電の量を示します。逆に太陽光発電の量が余って電力が電源系統の方へ逆流している場合はその量を測定し、売電した量を示します。
(1)特開平11-225440号