光デバイス/太陽電池
50.太陽光発電システムの種類
これまでいろいろな太陽電池を紹介してきましたが、これらの太陽電池は太陽光を受けている間は発電しますが、夜間や雲などによって光が遮られれば発電量が減ったり発電ができなくなったりします。また太陽は日の出から日没まで移動しますから地表に対する太陽光の入射角も時間によって変化します。このため日中も時間によって発電量が変化します。このように太陽光発電は発電量が不安定であることが難点とされてきました。
そこで太陽電池が発電した電力を安定して利用するためにいろいろな工夫がなされています。それが太陽光発電システムの重要な役割です。このページは半導体デバイスを説明するのが主要な目的で、このようなシステムはやや主目的から外れますが、太陽電池の実用には大変重要ですので簡単に触れることにします。
(1)電力利用システム
電力を利用する側から見たシステムには次のような種類があります。
(a)独立型 独立型というのは図50-1のように太陽電池を特定の機器(負荷と言います)にだけ接続するいわば専用システムです。太陽電池が発電する電圧と機器に必要な電圧は必ずしも一致しないので、通常は変換器を用いて電圧を調整します。
身近な例としては腕時計など、もう少し大きなものとしては門灯や庭園灯、あるいは屋外用の時計の電源など特定機器用があります。また離島など商用電源の送電が困難な地域で使われる電源システム、さらには人工衛星に搭載されるものなどは複数種類の機器の電源になる場合もありますが、これらも独立型に含めます。
独立型の場合、太陽電池が発電できない夜間などの電力供給は蓄電池が行います。昼間に太陽電池の発電により、蓄電池を充電しておき(充電できる電池を2次電池と言います)、それを夜間に使用するというシステムです。このため、2次電池が非常に重要な要素となります。最近では電気自動車の蓄電池をこの目的に流用する試みもあります。
(b)系統接続型 系統接続型の系統とは商用電源系統のことです。図50-2のように既に商用電源を使っている住宅やビル等(破線で囲った部分)に太陽電池システムも導入して両方を使えるようにするシステムです。昼間は太陽光発電を主として利用し、太陽光発電ができない夜間は商用電源を主として使う、いわばハイブリッド電源です。
この場合、使用機器(負荷)は既存の商用電源用のものですから、太陽光発電システムも商用電源と同じ交流にし、電圧も合わせる必要があります。変換器は直流から交流への変換と電圧の変換に用いられます。負荷がどちらの電源を使うかは分電盤によって振り分けられます。独立型と同じようにさらに2次電池を備えて商用電源の利用を減らすことも考えられます。
(2)発電システム
発電する側からみると、利用側からみた場合と少し違う分類ができます。
(a)集中型 集中型というのは、発電専用のスペースを設け、太陽電池アレイを多数配置して大電力を発電し、これを各家庭など使用者のもとまで送電するシステムです。メガワット級の電力を供給する太陽光発電システムをメガソーラーと呼んでいます。商用電源の発電所と同じようなシステムで、家庭などへ送電されます。使う側ではどの発電所から送電されているかわかりませんから、他の発電システムと区別はできません。トータルにみて他のエネルギー源の節約になるということです。
(b)分散型 分散型というのはまさに各住宅の屋根などに太陽電池パネルを設けてその住宅で必要な電力を賄えるようにするものです。独立型でも系統接続型でもよいですが、系統接続型なら余分な電力があれば系統側へ逆流させ、他の使用者に使ってもらうことができます。系統へ逆流させた分を電力会社に買い取ってもらうのが売電と呼ばれています。
ヨーロッパなどでは広大な場所に発電所を建設する集中型が主として考えられているようです。日本でも各地にメガソーラーが建設され、電力会社が電力を買い取る制度がつくられています。しかしどちらかというと個々の住宅あるいはビルの屋上に小規模なシステムを設置しようという考え方が依然として主流のようです。
欧州では景観の問題などから個々の住宅に太陽電池パネルを付けるのはあまり好まれず、また地続きで他国を経由して送電することも可能ですから、発電所を建設する広大なスペーズを見つけやすいこともありそうです。一方、日本は海に囲まれているため海を渡っての送電は考えにくく、都市での発電ができればその方がやりやすいと思われます。