光デバイス/太陽電池
33.シリコン薄膜の作り方(その3):多結晶、球状結晶
これまで、30項ではアモルファスシリコン薄膜、31項では微結晶シリコン薄膜の作り方について説明してきました。シリコン系の薄膜太陽電池で実用的に使われているのはだいたいこの2つの材料だと思われます。
この項では前の項では触れられなかった材料についてまとめて取り上げたいと思います。
(1)多結晶薄膜の成長方法
微結晶よりもっと結晶が大きく、膜全体がほぼ結晶で埋め尽くされているような状態、つまり多結晶の薄膜ができれば、多結晶基板を使った太陽電池と同等の効率をもった薄膜太陽電池ができるだろうという期待がもてます。
このような多結晶シリコン薄膜は太陽電池より薄膜トランジスタの分野でより強く求められています。製法についてはそちらを参照下さい。
太陽電池の場合は、アモルファスや微結晶薄膜での変換効率がかなり向上していますから、多結晶薄膜を使ってそれをいくらか上回ることができたとしても、膜を作るコストが大幅に上昇してしまうと、使いづらいことになってしまいます。多結晶薄膜太陽電池の難しさはそのような点にあるように思われます。
(2)球状結晶シリコン
薄膜ではありませんが、ウェハを作るようなバルク(塊)でもない変わり種を紹介しておきます。それはシリコン単結晶の小さな球を作り、これをたくさん並べて太陽電池を作ろうというアイデアです。アメリカのテキサス・インスツルメンツ(TI)社が最初に提案しました(1)。同社はこれを並べて太陽電池に応用することを提案しています。
TI社提案のシリコン球を作る方法はボート上で粒状に融かしたシリコン表面を一旦、酸化した後、冷却するというものですが、その後、もっとシンプルな方法が提案されています。それは図33-1に示すように融かしたシリコンをノズルから空中にポタポタと垂らすという方法です(2)。シリコンの滴は空中で冷えて固まりますが、そのとき自然に球状になるというものです。球は小さければ、その中身はほとんど単結晶になります。直径1mmのノズルを使って直径1mmのシリコン球ができます。この大きさはもはや粉ではなく、ビーズと言うイメージです。
以上、シリコンの薄膜や小さな球(ビーズ)を作る方法を紹介しました。ビーズの場合はほぼ単結晶のようですが、薄膜の場合はアモルファスまたは微結晶を含むものが普通です。
(1)特開昭58-55393号
(2)特開2002-292265号