光デバイス/太陽電池

29.多結晶シリコン太陽電池

 多結晶シリコンを使った太陽電池には、ウェハを基板にするもの、シート状あるいはリボン状のシリコンを使うもの、それに絶縁性基板上に多結晶薄膜を成長させるものなど、単結晶のものよりバラエティがあります。

 単結晶シリコン太陽電池の基本的な構造と製法については21項で紹介しましたが、多結晶ウェハを使うタイプの構造は基本的には単結晶の場合と同じです。シート状シリコンを基板とするものも基本的に同じ構造です。

 これに対して多結晶シリコンの薄膜を使うものはやや構造が異なります。これはむしろこれから紹介する予定のアモルファスシリコン太陽電池(33、34項)に近い構造になりますので、そちらで説明することにします。

 単結晶シリコン太陽電池の構造の特徴として、表面凹凸構造、接合構造、電極の3つを挙げましたが、これらは多結晶シリコンウェハを用いた太陽電池でもほぼ同じです。強いて言えば、表面凹凸構造の作り方に違いがあるくらいです。

 単結晶シリコン太陽電池では入射光をできるだけ結晶内に取り込み、また一旦結晶内に入った光を外に逃がさないように、表面に凹凸構造を設けるのが普通です。単結晶シリコンの場合、この凹凸はエッチングによって作ります。エッチング液の種類によっては結晶の方向によってエッチングの進み方が違うものがあります。ある面の方向にエッチングが進みにくいと、表面に規則的な凹凸ができます。単結晶シリコンではKOHなどのアルカリ水溶液を用いて細かいピラミッド(四角錐)状の凹凸構造を作ることができます。

 ところが多結晶の場合、隣り合う結晶の方向がばらばらで単結晶のように全体の原子の並び方が一定していません。このため、単結晶と同じようにエッチングをしても規則的な凹凸構造は作れません。

 そこでいろいろな方法が検討されています(1)。例えば、機械的にシリコンに溝を掘る方法、レーザを用いて溝を掘る方法があり、またドライエッチングを用いる方法、あるいはウェットエッチングでエッチング液を工夫する方法等があります。

 大量に処理するにはやはりエッチングによるのがよいと思われますが、単結晶のように規則的な構造を作るのは難しく、逆に規則性のない凹凸を作ることになります。

 繰り返しになりますが、太陽電池を作る手順を図29-1を見ながらもう一度説明しておきます。

(a)p型多結晶シリコン基板を用意し、表面に上記のような方法で凹凸構造を設けます。

(b)つぎにn型の不純物(ここではリン)を拡散し、n型層を作ります。

(c)表面に反射防止膜を着けます。反射防止膜の材料は窒化シリコンとか酸化チタンなどの誘電体です。

(d)基板表面に銀ペーストを電極の形状になるように印刷、塗布します。

(e)焼成すると銀成分が反射防止膜を透過し、表面電極ができます。反射防止膜を予め除去したのち、電極を形成する方法をとっても構いません。

(f)基板裏面にアルミニウムの粉を含むペーストを塗布し、焼成すると、p+層が形成されてBSF層となり、併せて裏面電極ができます。 (d)、(e)と(f)の順序は逆にすることもできます。

 以上が基本的な多結晶シリコン太陽電池の作製手順です。この手順はシート(リボン)状の薄い基板の場合でもとくに変わりません。この方法で作られた太陽電池は現在、もっともよく使われていると思われます。変換効率は15%程度です。

(1)特開2000-101111号