光デバイス/太陽電池
22.裏面電極型太陽電池
前項の単結晶シリコン太陽電池では(3)で説明しているようにフィンガー電極を使って電極によって入射光が遮られるのを防いでいます。これを究極的に進めると入射面には電極を設けなければいいということになります。この考え方は古くからあって、その断面構造の例を図22-1に示します(1)。簡単に言えば、pn接合を作る拡散領域を基板表面だけでなく側面から裏面まで回り込むように設け、光入射面上の電極を裏面に移したものです。光入射面に電極がないこのような構造を裏面電極型またはバックコンタクト(back-contact)型と呼んでいます。
図22-1の構造の場合、入射面側の接合で発生したキャリアは拡散層を通って裏面側まで移動して電極に流れ込む必要があり、移動距離が長く、この間で再結合が起きる可能性が高くなります。これを改善するために、図22-2に示すように基板に直径の小さい貫通孔(スルーホール)を多数設け、貫通孔内を導体で埋め、表面で発生したキャリアをこの貫通孔内の導体を通じて裏面に導く構造も提案されています(2)。ただこの方式では、表面にできる開口部分が、面積としては小さいとはいえ発電に寄与できないという問題があります。しかし何と言っても基板に貫通孔を設ける工程が加わり、コストの点では好ましくないのが難点です。
上記の問題点を解決するために考案されたのが、接合をすべて裏面側に設けた図22-3のような構造です。素子構造としてはいろいろな変形、工夫がなされていますが、図はひとつの典型例です(3)。
光は凹凸構造や反射防止膜を設けた基板表面から入射し、基板を透過して基板裏面側に形成されたpn接合に入射します。従来の基板裏面側にあった対抗電極は相変わらず裏面に設ける必要があります。そこでn型シリコン基板を使用する場合、基板裏面にpまたはp+型の拡散部分とn+型の部分とを作り、それぞれの部分に電極を設けています。
入射光は基板を通過してp型部分のpn接合で吸収されてキャリアが発生します。電子は同じ面上にあるn+部分に流入し、電極間に起電力を発生します。
キャリア発生部分であるp型部分をエミッタと呼ぶことがあります。n+部分はBSF層であり、この部分をベースと呼ぶことがあります。エミッタ電極とベース電極は多数作られたp型部分とn+型部分をそれぞれ接続するように櫛形電極とし、それが噛み合うような形に形成される場合が多いようです。どうしても両電極が近接しますから、短絡に気をつける必要があります。
裏面電極型構造では20%を越える変換効率が報告され、シリコン系の高効率太陽電池の一角を担うタイプとなっています。
(1)特開昭51-29884号
(2)特表2007-525008号
(3)特開2002-164556号