光デバイス/太陽電池

16.太陽電池の分類

 太陽電池共通の課題についての話は大体終わったので、これから個別の話に入っていくことにします。はじめに太陽電池にはどんな種類があるかを見渡しておくのがよいと思いますので、分類を考えてみましょう。

 太陽電池の分類では材料が重要と思われます。太陽電池のデバイス構造はそれほどバリエーションがありません。例えば同じ2端子デバイスの半導体レーザにはいろいろな構造の素子がありますが、太陽電池は基本的に平面的な接合があり、正負の電極があればよいので、構造上変化が多くありません。

 これに比べると材料はいろいろなものが研究されています。ただ私たちの身の回りで実際に使われている太陽電池となると話は別で、これはほとんどすべてがシリコン(Si)と言っていいと思います。

 太陽電池は他のデバイスのように一つのチップをできるだけ小さくするということができません。逆にできるだけ太陽光が当たるように面積を大きくしなければなりません。そのため性能が良くてもあまり高価な材料は使えないのです。Siは電子デバイスで多く使われているという実績があり、資源も豊富なので、半導体材料としてはもっとも使いやすいと言えます。

 ただSiといっても1種類ではありません。Siでさえも電子デバイスで使うような品質の良い単結晶は高価です。そこで性能は多少犠牲にしてもできるだけ製造コストの低い結晶製造法が検討されています。さらに単結晶でなく多結晶でも使えるので、その範囲まで広げて研究がなされてきました。以上はバルク結晶の話です。この場合は結晶をn型かp型にしておき、その一部に逆極性のドーピングを行ってpn接合を作ります。

 またさらに価格が安く大面積のものが作りやすい、多結晶あるいはアモルファス(非晶質)の薄膜Siが使われています。この場合は基板はガラスなどにしてその上に薄膜を積層してpn接合を作ります。

 このような同じSiでも単結晶、多結晶、アモルファスではその製法がまったく異なります。ほとんど別の材料のように思ってもよいかも知れません。製法については後で詳しく触れる予定です。

 Si以外では化合物半導体があります。例えばGaAsなどのⅢ-Ⅴ族は、LEDなどの発光デバイスと同じようにエピタキシャル成長により単結晶の薄膜を作りpn接合とすることができます。Ⅲ-Ⅴ族単結晶系の太陽電池はシリコンより変換効率が高いことが知られていますが、何と言っても高価ですので、地上の発電用には使いにくい材料です。人工衛星に搭載するものなどあまりコストに制限されない用途に限って使われています。

 化合物半導体の場合は単結晶が多いですが、多結晶薄膜も使われます。とくにCuInSe(CISと略称する)などカルコパイライト系(I-Ⅲ-Ⅵ族)と呼ばれる他にはあまり応用されない材料が注目されています。化合物半導体はアモルファスではほとんど性能が出ないので、使われる例はないと思います。

 そのほか有機物の半導体も研究されています。塗布のような簡単な方法で大面積なものが作れるという期待がありますが、耐候性が十分でかつ高い変換効率のものはなかなか難しく、実用には至っていません。

 構造としては単純なpn接合より間にノンドープ層を挟んだpin接合型の方がよく使われます。その方が空乏層が広くできるので変換効率を高めることができるからです。さらにpn接合やpin接合を積層したものがあります。これはタンデム型と呼ばれます。バンドギャップエネルギーの違う材料を作りやすい化合物半導体に多いですが、シリコン系でも作られています。

 以上は基本的にpn接合を利用するものですが、その他に湿式という構造も材料もちがい、原理的にも異なる太陽電池が開発されています。半導体電極と電解質溶液の組み合わせによるもので、電解液中のイオンの移動を利用しています。かなり低価格になる期待はあります。また取り扱いが不便な電解液を固体に置き換えた新しい材料の太陽電池も提案されています。これらについても後に少し詳しく触れる予定です。

 以上を簡単にまとめた図を示しました。今後、これらについて一つずつ作り方と性能上の特徴について調べていくことにします。