光デバイス/太陽電池
8.太陽電池は電力需要に応えられるか
太陽から地球に届くエネルギーのうち地上の1地点で使える量が大体わかりましたので、これを太陽電池で電力に変換したとき、どのくらいのエネルギーが得られるかを見積もることができます。太陽電池そのものの話に入る前にその計算をやってみましょう。
全世界で計算したいところですが、データの関係で日本での話に限ります。まず現在の日本では年間どのくらいの電力を使っているかを調べる必要があります。これは資源エネルギー庁のエネルギー白書 等で知ることができます(図8-1参照)。
これによると現在の年間発電量はちょうど1兆(1012)kWh程度と莫大な量になっています。電力の単位はW(ワット)ですが、この電力を一定時間消費した量を電力量と呼んでいます。1kWhは1kW(=1000W)の電力を1時間使用したときの電力量です。
これは例えば1kWの電気ヒータを1時間使ったときの量に当たります。100Wの電球を1時間点灯すれば0.1kWhということになりますから、1kWhの電力量があれば10時間点灯できることになります。
因みに図8-1によると、最近ではこの発電量の約6割が石炭、石油、天然ガスという化石燃料を使って発電されており、約3割が原子力、残りの1割が水力によっています。太陽光など自然エネルギーによる発電量はまだ無視できるほど僅かな量に留まっています。この比率は世界共通ではなく、国によって様々です。
さてこの発電量はほぼ電力需要を満たしていると言えるので、太陽電池による発電でこの需要にどれだけ応えられるかを検討してみます。まず「6.年間平均日射量」の図6-1によると年平均全天日射量は日本全国で11~14MJ/m2・dayであることがわかります。MJ(メガジュール)のkWhへの換算式も同じ図に載っています。1MJ=0.28kWhですから、全天日射量は3.1~3.9kWh/m2・dayとなります。
すなわち、年間に均すと1日に1m2の地表面に約3.5kWhの電力が供給されていることになります。日本の陸地面積は約38万km2(=3.8×1011m2)ですから、日本全土に1年間(365日)に供給される太陽エネルギーは4.8×1014kWhという計算になります。
このエネルギーと日本の発電量とを比べると500倍も太陽エネルギーの方が大きいことがわかります。つまり日本の国土の1/500の面積に届く太陽エネルギーが日本全国で使われている全電気エネルギーの量に当たっていることになります。ただ現在の太陽電池は性能のよいものでも太陽エネルギーの約1割、10%程しか電気エネルギーに変換できませんので、日本の国土の1/50(=2%)に太陽電池を敷き詰める必要があることになります。
国土の2%というと約7600km2ですから、中くらいの広さの1県をすっぽり覆うくらいの見当になります。これは結構な広さのように感じられますが、太陽電池は海上にも設置可能と考えれば、計算上は不可能な数字ではないと思われます。少なくとも将来、電力需要の一部を供給できる可能性はあると言えます。
今後、太陽電池について具体的に調べ、国土の何%という面積を占めるほどの大量の太陽電池を生産することが可能かどうかも考えなければならないでしょう。またこのようなことは日本1国で行っても意味がなく、全世界的に考えなければならないことであり、それが可能かどうかも考えなければならない問題だと思います。ここでそれをまともに検討することは無理だと思いますが、少しだけ突いてみたいと思っています。