光デバイス/太陽電池
7.日射量の定義と測定方法
日射量の定義にはいくつかの種類があります。前節の図6-1で使われている全天日射量とは地表にあらゆる方向からやってくる日射をすべて含めた日射量です。日射は太陽の方向からだけ来ると思われがちですが、地球では大気によって太陽光が散乱されるので、太陽光はいろいろな方向から地表に降り注いでいます。
大気に塵など光の散乱を起こす粒子が多く含まれている都市部では、空の色が白っぽく見えますが、これは散乱した光が太陽の方向以外から届いているためです。高山など空気がきれいなところでは空の青色は暗い感じに見えます。大気による散乱が少ないためです。大気がない月の表面では空は昼でも暗く、太陽だけが光っていることになります。
太陽の方向から直接やってくる日射量のことを直達日射量といい、それ以外の方向からくる日射量を散乱日射量といいます。直達日射量と散乱日射量を足したものが全天日射量です。この他、地表面や地表にあるいろいろな物体が反射する反射日射量というものもあります。
日射量の測定方法については「2.太陽定数」のところでも少し触れましたが、もう少し詳しく説明しておきます。図6-1の日射量の単位はMJ/m2・dayとなっていますが、日射量は単位面積当たりに入射する太陽光のエネルギーです。つまり測定は光のエネルギー(強度)を測ればよいことになります。
この測定ができるのはまさに太陽電池です。半導体のpn接合に光が入射するとそのエネルギーが電気エネルギーに変わるので、これを電圧計などで測ればよいわけです。実際にこのような半導体光検出器を使った日射計も開発されています。小さなチップ1つで測定ができるので、持ち運びに便利な小型機器ができる点ではよいのですが、この半導体式には波長依存性があるという難点があります。太陽光は4で説明したように、広いスペクトル分布をもっています。日射量はある特定の波長の光ではなく、この全体の波長範囲を含めて測りたいので、波長依存性の少ない測定方法の方が有利なのです。
そこで広く用いられているのが、熱の測定を利用する方法です。光を反射しない黒い物体(理想的なものを黒体と言います)に当てると光のエネルギーはその物体に吸収され熱に変わります。この熱に変わるエネルギーはほとんど光の波長によらないので、日射量の測定に向いています。熱エネルギーの増加は温度の上昇になって現れますから、温度を測定すれば求められます。
温度の測定もいろいろな方法で行われますが、正確な測定には熱電対が使われます。熱電対は異なる金属を接触させると電圧が発生するゼーベック効果という現象を利用しています。種類の違う金属のワイヤの端を溶接するなどして繋ぎ接点を作り、その反対側に電圧計を繋いで接点部分を加熱すると電圧計に電位差が発生したことが示されます。
正確な測定には図7-1のように2本のワイヤの両端を繋ぎ、2つの接点を作ります。そして一方の接点を一定温度に保ちます。この一定温度として普通0℃が使われます。接点を氷水に漬けるだけで実現できるので簡単だからです。途中に電圧計を入れて電圧を計ればもう一方の接点の温度によって電圧が変化します。電圧計を繋ぐとこの部分に別の金属が挟まってしまうかもしれませんが、その部分に温度差がなければその影響は打ち消されるので問題ありません。
熱電対に使う金属の組み合わせは、起電力が大きく、しかも温度と電圧の関係ができるだけ直線的になるものが選ばれます。よく使われているのは銅とコンスタンタンの組み合わせです。コンスタンタンは銅とニッケルの合金です。
現在よく使われている温度測定器では接点1つの熱電対を繋げるだけで、温度を換算して表示してくれるので、氷水に漬けるような手間もなくなっています。
全天日射計は図7-2のようなガラスのドームの中に黒色の板を水平に置き、あらゆる方向から入射する光を受け、それによる温度上昇を測っています。実際には正確な測定をするために熱電対を多数繋いだ熱電堆というものを使い接点の配置などにも工夫が凝らされています。
直達日射計の場合は、温度測定部分は上記の場合と同じですが、太陽からの直接光だけを捕らえるように図7-3のように筒状のものを使います。自動的に太陽の方向を追尾する装置もあり、これを使えば長時間の測定ができます。全天日射計でこの直達光の部分だけを塞いで測定すれば、散乱日射量が測定できます。