光デバイス/太陽電池

9.pn接合を用いた太陽電池

 太陽電池によって太陽エネルギーを利用することを検討する価値は十分あることが分かりましたので、つぎは太陽電池の性能について調べることにします。

 まずは太陽電池の原理ですが、現在実用化されている太陽電池はすべて半導体のpn接合を用いています。pn接合を使わず原理のちがう太陽電池も開発されていますが、それについては後で触れることにします。

 pn接合は発光ダイオードや半導体レーザなどの発光デバイスでは重要な役割を果たしています。pn接合の順方向に電流を流すことによってn型半導体側から電子、p型半導体側から正孔を半導体中にそれぞれ注入し、pn接合部分で両者を再結合させて発光させるのがその原理です。

 それでは逆にpn接合に光を当てるとどういうことが起こるでしょうか。光のエネルギーがpn接合を作っている半導体のバンドギャップエネルギーより小さいと光は吸収されずに通り抜けてしまい何も起こりません。しかしバンドギャップエネルギーより大きいと吸収され、図9-1のエネルギーバンド図に示すように価電子帯から電子を励起し電子と正孔の対が作られます。

 発生した電子と正孔はpn接合の電界に沿って互いに反対の方向に進みます(図9-1で線が斜めになっている部分がpn接合部分で、電位が傾斜し電界が存在することが示されています)。図9-2のようにpn接合の両端を電線で繋いで短絡してもpn接合部分の電界はなくなりませんから、この電線には電流が流れます。これを短絡電流と言います。

 普通の化学反応を利用している電池では、両極を短絡すると大きな電流が流れ繋いでいる電線が焼き切れたりして危険です。また電池の中で異常な化学反応が起こって電池の容器が破裂する恐れもあるので、やってはいけないことです。しかし太陽電池の場合は何ら問題はありません。

 またこの電線を外して光を当てると、pn接合の両端には光を当てていないときはなかった電圧が発生します。これを開放電圧と言います。

 ただ短絡や開放では太陽電池が光のエネルギーを変換して発生する電気エネルギーを利用することができません。外部回路に抵抗器を繋いでおけば、その両端に電圧が発生しますから電力が取り出せることになります。

 このときどんなエネルギーが取り出せるかを示したのが図9-3です。横軸が電圧、縦軸が電流です。抵抗値がRの抵抗器を繋いだとき、抵抗器両端の電圧Vと流れる電流Iの関係はV=R×Iですからグラフ上では傾きがRの原点を通る直線で表されます。

 一方、太陽電池の特性は図の赤線のような曲線で表され、電圧軸との交点が開放電圧V、電流軸との交点が短絡電流 Iとなります。この太陽電池に抵抗値Rの抵抗器を繋いだときに発生する電圧Vと電流Iはこの曲線と抵抗を表す直線との交点から求められます。

 抵抗器のところをランプやモータに変えれば、それらの抵抗値に従ってV×Iの電力(エネルギー)が取り出せることになります。