光デバイス/受光素子

26.CCDの固体撮像素子への応用

 CCDを最初に提案したベル研究所の特許にはすでにCCDがビデオカメラに応用できると書かれています。前項でも説明したように基板の裏面側から光を照射すると、半導体基板中に電子と正孔の対ができます。半導体がn型で電極にマイナス電圧がかけてあると、発生した正孔だけが半導体と絶縁膜の界面近くに引き寄せられて貯まります。発生する電子と正孔の数は光の強度によって増減しますから、半導体表面に貯まる電荷の量は照射される光の強度によって変わります。つまりこの時点で、各電極部分の光の強弱の情報も含めてアナログ的に画像の情報が記録されることになります。

 この貯まった電荷をCCDの電荷転送機能を使って一方向に移動させ、端からそれを順番に流し出すことによって電流に変えれば、画像が電気信号に変換されることになります。ただしそれは電荷を転送している間も光が照射され続けていると、電荷を転送した後にも電荷が貯まり続けることになり、電気信号に変換された画像が元のものとは違ってしまいます。そのため、電荷を転送している間は光を遮断してやるなどの対策が必要です。

 固体撮像素子は画像を検知するという意味でイメージセンサと呼ばれることもあります。このイメージセンサには一次元のものと二次元のものがあります。一次元とはこれまで説明してきたようにCCDの電極を一列に並べたものです。画像の光をこの一次元イメージセンサに当てるとその画像のうち、どこか1つの線上の画像が記録されます。この線に垂直方向に画像が描かれている原稿を動かすか、イメージセンサの方を動かしながら、繰り返し画像情報を記録すれば、最終的に画像全体が記録できます。このようなやり方はファクシミリとかスキャナで使われています。

 しかしビデオカメラやデジタルスチールカメラの撮像ではこのようなやり方は使えません。レンズから入ってくる画像を二次元的に一気に捕らえる必要があります。このような目的にはCCDの電極を二次元に多数配列した二次元イメージセンサが使われます。一次元の場合は記録した画像を1方向に転送して端で電気信号に変えるようにすればよいですが、二次元の場合はどうすればよいでしょうか。これにはいろいろな考え方があります。  ここでは現在もっともよく使われている方式であるインターライン転送方式を説明しておきます(1)。この考え方もCCDの提案がされた後すぐにアメリカで提案されたようです。

 図26-1がインターライン転送方式の原理図です。複数の受光部(受光素子)が縦横二次元に配列されています。その横に縦方向に細長い垂直CCDシフトレジスタ部が配置されています。これがCCDですが、これまで説明してきた構造と違うところは受光素子と電荷を転送するCCDの部分が分離されている点です。転送機能だけを行うシフトレジスタ部には光が当たらないようになっています。インターラインというのは「線の間」という意味ですが、受光素子のラインの間に転送部があるということを示しているわけです。下部には水平CCDシフトレジスタ部が配されています。

 動作を説明します。光が受光部に当たると電荷が貯まります。この各列の電荷をそれぞれ隣の垂直CCDシフトレジスタ部に移動させます。移動が終わったところでCCDの転送動作を行い、一行分が水平CCDシフトレジスタ部に出力されたところで、水平CCDの転送動作を行い、全行が終わるまで繰り返します。これで1画面分の電気信号への変換が終わります。

 図26-1のA-Aで示した箇所で切った断面図が図26-2です。受光部はn型シリコン基板の上を覆うSiO膜上に透明電極を着けたものです。まず同図(a)のようにこの透明電極に電圧Vsとしてマイナスの電圧をかけて空乏層を形成しておき、光を当てると電極の下の部分に正孔が貯まります。

 この受光部のすぐ隣にトランスファ電極が設けられています。トランスファ電極の電圧Vtが0Vならば受光部に貯まった電荷は移動できませんが、Vtをマイナスにすると受光部の電荷は同図(b)に示すように垂直CCDシフトレジスタ部のシフト電極の下に移ります。

 このシフト電極が前項で説明したCCDの電極の一つで、紙面に垂直方向に複数の電極が配置され、それらにφ1またはφ2の電圧が交互にかかるようになっています(前項の例のように3種類の電圧でもよいです)。これによって紙面に垂直方向に電荷の転送ができます。なお、シフト電極の上には遮光層があって、この部分には光が当たらないようになっています。

 以上がインターライン転送方式の基本的な動作原理です。つまり1列に並んだ受光部それぞれに光強度に応じて蓄積された電荷の情報をまずこの各列ごとに列に沿った方向に転送し、ついで各列の情報をまとめて横方向に転送することにより、2次元情報を決まった順序で集めるという方式です。素子構造についてはいろいろな改良がなされていますが(1)、ここでは立ち入りません。

(1)特公昭57-032547号

 

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