産業/特許

13.特許の分類<調査>

 少なくとも日本やアメリカ、ヨーロッパに出願される特許は必ず技術分野が分類されています。今でこそ特許文書は電子化され、テキスト検索ができますが、それ以前の時代は分類がされていないと検索のしようがありませんでした。

 テキスト検索ができるようになっても言語にはいろいろな表現方法があり、技術文書でも表記のぶれがあります。テキスト検索の場合はこれを考慮していろいろな表現を併記して行うのが原則ですが、すべてを尽くせる保証はなく検索に漏れを生じやすいという難点があります。そこで技術分類を組み合わせた検索がよく行われます。

IPC

 発明の技術分野によって特許をシステマティックに分類する方法が作り上げられてきました。そして国際的に共通に使えるように作られたのが国際特許分類(International Patent Classification、略してIPC)です。

 IPCは1975年に発効したストラスブール協定によって定められた国際的に通用する特許分類コードです。技術の進歩に伴って改訂が繰り返され、第8版が最新版となっています。今後はこのようなまとまった改訂を行わず、随時必要に応じて改訂するように方針転換が図られたようで、使い方も変わってくるかもしれませんが、ここでは基本的なことを例をあげて説明します。

 3項の書誌事項で一度見た特許2540791号のフロントページをもう一度開いて下さい。フロントページの(45)発行日の行の下の罫線のすぐ下、一番左端に「(51)Int.CL6 」とあるのがIPCの意味です。数字の6は第6版であることを示しています。当時は2版前の第6版が使われていたということです。現在の日本特許のすべての公報にはIPCが付与され表示されています。

 ところで余談ですが、「Int.CL6」の前に(51)という数字が書かれています。日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパの公報にも、各書誌事項の項目にはすべてこのような数字がついています。今までこれにも触れませんでしたが、これは何を意味するのは疑問に思われていた方もいらっしゃるかと思います。これは前項で出てきたWIPOが書誌事項に共通の番号を割り当て、各国の公報にこれを付けるように勧めているものです。これを見れば、理解できない言語で書かれた公報でも書誌事項だけは判別できることになります。重要なところでは、出願番号が(21)、出願日が(22)、公開番号が(65)、特許番号が(11)です。これらの番号や日付はその意味さえわかれば、活用ができるので便利です。また出願人は(71)、特許権者は(73)、発明者は(72)です。そしてIPCは(51)となっているわけです。

 話を戻しますが、この特許に付与されたIPCは「H01L 33/00」、[H01L 21/205]、[H01L 21/324]の3つです(共通のH01Lは2行目以降省略されています)。これが何を意味するかは、特許情報プラットフォームで調べることができます。特許・実用新案検索のメニューの一番下の「特許・実用新案分類照会(PMGS)」(PMGSはパテントマップガイダンス)を開いて下さい。「コード照会」と「キーワード照会」が選べます。「コード照会」はこれからしようとしているようなコード記号がわかっていてこれが何を意味するかを調べる場合に使います。「キーワード検索」はある技術分野の分類記号は何かを調べたいときに使います。

 その下に3種類の分類体系のどれを照会したいのかを選ぶボタンがあります。FI/ファセット、Fターム、IPC(最新版)の3種です。

 「コード照会」「IPC(最新版)」を選び、その下の分類記入欄にH01L33/00と半角、スペースなしで入力します。これは第6版なのですが、取りあえず最新版の検索をしてみます。照会ボタンを押します。

 H01L33/00 「光の放出に特に適用される少なくとも1つの電位障壁または表面障壁を有する半導体装置;(以下略)」という説明が出てきますが、要は半導体の接合を利用した発光装置という意味で、発光ダイオードがここに入ることになります。この説明の末尾に[2,8,2010.01]という記載があります。これがIPCの改訂記録で、この分類は2版、8版、2010年1月の改訂で変更されていることを示しています。6版のときは2版のままだったことがわかります。8版になって上記説明の一部が改訂されています。H01L33/00の左にある+ボタンを押して下さい。細分類H01L33/02~H01L33/64が表示されるはずです。各説明文の末尾にはすべて[2010.01]と記されていて、この細分類はごく最近に作られたことがわかります。IPCでは長らく発光ダイオードの分類はH01L33/00の1つだけだったのです。2000年代に入って発光ダイオードは大きく進化したことには違いありませんが、2010年まで細分類が無かったのは驚きです。

 その次の H01L21/205をみると

H01L21/205・・・・・固体を析出させるガス状化合物の還元または分解を用いるもの,すなわち化学的析出を用いるもの[2]

となっています。最初のポツ5つには意味があります。これは分類の階層を示しています。上の方にスクロールして4ポツを探すと

H01L21/20・・・・基板上への半導体材料の析出,例.エピタキシャル成長[2]

が上位にあり、これは有機金属気相成長に対応する分類であることがわかります。 3番目のH01L21/324をみてみましょう。

H01L21/324・・・・・半導体本体の性質を改変するための熱処理,例.アニーリング,シンタリング(カッコ内省略)[2]

となっていて熱処理に関する分類であることがわかります。これも5ポツですので上位を探すと

H01L21/30・・・・H01L21/20~H01L21/26に分類されない方法または装置を用いる半導体本体の処理(カッコ内省略)[2]

H01L21/18・・・不純物,例.ドーピング材料,を含むまたは含まない周期表第IV族の元素またはA↓I↓I↓IB↓V化合物から成る半導体本体を有する装置[2,6,7]

H01L21/04・・少なくとも一つの電位障壁または表面障壁,例.PN接合,空乏層,キャリア集中層,を有する装置[2]

H01L21/02・半導体装置またはその部品の製造または処理[2,8]

とポツ1つまで辿れます。Ⅲ-Ⅴ族半導体への不純物添加に伴う熱処理という適切な分類がなされていることがわかります。この上位が

H01L21/00 半導体装置または固体装置またはそれらの部品の製造または処理に特に適用される方法または装置[2,8]

であり、これが先程のH01L33/00と同位ということになります。H01L21/00の方は2版からこのような細分類がなされているのに、H01L33/00は最近まで細分類がなかったというのはどういう理由によるのかどうも解せません。

 なお、H01Lは「半導体装置,他に属さない電気的固体装置(以下略)」となっていてこのページにもっとも関係する大分類になると思います。

 その他の記号の意味を少し説明しておきましょう。一番頭のHはセクションと呼ばれるもっとも大きな分類を示し、A~Hの8つがあります。Hは「電気」、Gは「物理学」で、半導体デバイスが関係するのはこの2つでしょうか。Cの「化学・窯業」も関係する場合があるかも知れません。

 その下の2桁の数字はクラスと呼ばれますが、これが何を意味するかはパテントマップガイダンスで調べられます。分類記入欄に「H」だけ入れて照会ボタンを押してみて下さい。H01~H05、飛んでH99の6つあることがわかります。H01は「基本的電子素子」ですから、半導体デバイスは大体ここに入りそうだということがわかります。つぎに「H01」をクリックすると、その下の分類が表示される、という仕組みになっています。

 上記では下位の分類から上位へ遡りましたが、逆に上位分類から下位へ下ることももちろんできます。例えば「H01L31/00」を探してクリックしてみて下さい。31/00は光エネルギーを電気エネルギーに変換するいわゆる受光素子に関する分類ですが、たくさんの下位分類のリストが表示されます。

 例えば少し下に行って、31/04というところを見て下さい。「・変換装置として使用されるもの[2]」という説明がついています。そのすぐ下の31/042は「・・光電池のパネルまたは配列を含むもの,例.太陽電池[5]」となっています。

 IPCは特許情報プラットフォームの「特許・実用新案検索」で使うことができ、キーワードの検索は、用語が人によって違ったり、表記方法が違ったりすると漏れが起こる恐れがありますが、IPCだけで検索すればそういうことを防ぐことができます。しかしIPCの分類だけでは分類が粗すぎ、1つの分類に属する特許の件数が多すぎて困ることが多いと思います。そういうときは、キーワード(技術用語)と組み合わせて使えば、絞り込むことができます。

 次に国内だけで使われているFIとFタームというコードについて簡単に説明しましょう。日米欧など各国はそれぞれその国独自の分類コードを作って使っています。日本独自の分類コードにはFI(File Index)とFタームの2種類があります(FタームはFile Forming Termから来ているとも言われますが、真偽のほどはわかりません)。

FI

 もう一度、特許2540791のフロントページを見て下さい。識別記号、庁内整理番号の欄がありますが、これは空欄で、その右にFIと書かれた欄があり、その下に書かれているのがFI記号のコードです。IPCと同じH01L33/00と書かれています。FIは基本的にIPCと同じ体系(システム)で分類を行っていますので、上記のIPCのシステムを理解していれば、あとは違いの部分だけを知ればよいと思います。IPCとの違いは少し違った形式の細分記号が付いているところです。H01L33/00の右側に少し離れてBの文字がありますが、これが分冊識別記号と呼ばれる細分のための記号です。ところが特許情報プラットフォームのPMGSでFIの一覧表をみると、H01L33/00@Bは存在しないことがわかります。

 ここでちょっと注書きをしますと、PMGSの検索では分冊識別記号は@を付けて、その次にBなどのアルファベットを書くことになっています。ところがFIを公報テキスト検索で使う場合は@が不要で、入力の仕方が違うので注意が必要です。

 H01L33/00@Bがないのは2010年のIPCの改訂に伴ってFIも大幅な改訂が行われ、この分類は削除されたためです。それでは現在はどう変わったのかを調べるにはどうしたらよいでしょうか。これには特許2540791の経過情報をみればわかります。経過情報のなかの出願情報を開くと、FI記事という欄があり、ここにFIのリストが載っています。3番目にH01L33/00Bが載っています(@がない)。その下にH01L33/00,186とH01L33/32という分類が載っています。これが新しい分類です。何を意味するかPMGSに戻って調べてみます。分類記号をクリックすると直接PMGSに飛ぶことができます。

 するとH01L33/00,186も使われていないことがわかります。 H01L33/32の方は

H01L33/32・・・・窒素を含むもの[2010.01]

となっています。4ポツですので、上位へ辿ってみます。

H01L33/30・・・III族およびV族元素のみを有するもの[2010.01]

H01L33/26・・発光領域の材料[2010.01]

H01L33/02・半導体素子本体に特徴のあるもの[2010.01]

 なお、FIは完全にIPCと対応関係にあります。これは両者がまったく同じという意味ではなく、FIが決まれば、対応するIPCが決まるという意味です。出願情報にIPCが載っていないのはそのためです。

 FIにはもう一つ細かい分類を示す方法があります。現在の発光ダイオードの分類にはありませんが、先程もう使われていないH01L33/00,186という分類がありました。H01L33/00の後にカンマで区切ってさらに展開記号と呼ばれる3桁の数字186を付いている分類が他のテーマでは見られます。展開記号がある場合はその後にさらに分冊識別記号を付けることもできます。展開記号と分冊識別記号は両方有る場合、ともに無い場合、どちらか一方がある場合のいずれの場合もあります。

Fターム

 さてPMGSのFIのリストの右側に5F241という記号が見えていると思います。これがFタームのテーマコードです。クリックすると7通りの大分類が表示されます。さらに右側の「開く」をクリックすると下位のすべての分類の一覧が表示されます。

 FタームはIPC、FIとはまったく違う体系をとっています。発光ダイオード(LED)は5F241という記号を付け、このなかを細かく細分しています。表の左端の欄を縦にみて下さい。AAから始まってFFまであり、そのすぐ右の欄に目的、LED駆動回路、・・・とこの分類の意味が書かれています。そして表を右に辿ると、AA01、AA02、・・・と細かい分類が記されています。

 最近の公開公報にはこのFタームのテーマ記号も参考として載っていますが、上記の例の特開平5-183189にはまだ載っていません。しかしFタームによる分類はデータベースに収録されている案件にはすべて付与されているので、先程の経過情報の出願情報をみると、付与されているFタームを知ることができます。出願情報のなかのFI記事の下にテーマコード記事とFターム記事が載っています。テーマコードの一番上には5F041が載っていて、その下に5F141、5F142、5F241というテーマコードが並んでいます。これはLEDの分野では技術が急激に発展したため、IPC、FIと同様にFタームの分類コードも見直されたことを示しています。現在使われているのは5F241と5F142です。5F142は発光ダイオードのパッケージに関する分類で、5F241はそれ以外の発光ダイオード本体や駆動回路に関する分類がなされています。

 Fタームも階層構造になっていてIPCと同じように「・」の数がその階層をを示しています。例えばCA00は「LED形式(1)」でその下に「・」が1つのコードが6つあります。CA40はCA31「・LED材料」、CA32「・・母体材料」、CA34「・・・Ⅲ-V族」の下に位置することが分かります。つまり5F241 CA40はこの特許がLEDの母体材料がⅢ-V族のGaNであるものに関することを示しているわけです。

 上記の流れではFIからテーマコード5F241を見つけましたが、テーマコードがわかっている場合には、照会画面で「Fターム照会」に直接コードを入力して検索することができます。このとき、右側の「Fタームリスト」にチェックが入っていれば上でみた一覧表が表示されますが、「Fターム解説」を選べば、さらに詳しい解説が表示されます。5F241についての解説を見てみましょう。

 まずFIとの関係が詳しく説明されたあと、Fタームの解説が書かれています。「AA 目的」をクリックしてみると、下位のコードの説明が出てきます。ただしこの解説はFタームを付与する人に向けて書かれていますので、そう思って読む必要があります。AA11「・・発光色、波長の改善*」の「*」の意味は「色、及び波長の記載があればFターム付フリーワードで記入すること」と書かれているように「フリーワード」があることを示しています。

 ご面倒ですが、もう一度、経過情報の出願情報に戻って下さい。Fターム記事の下に審査官フリーワード記事というのがあって「5F241 サフアイア」、「5F241 GaAlN」などのキーワードが挙げられています。これはFタームに加えてさらに言葉をキーワードとして付与しておいた方が後の検索に役立つと思われるときに付与されると思われます。なお、テーマコードが新しくなった際に、以前に付与されていたフリーワードは消さずに残しているようで、分類が改善されてもはや不要と思われるフリーワードが新しいテーマコードになっても残っていることがあります。

 この審査官フリーワードは適当な分類がないことを示しており、これが多く付くということはFタームの改訂が必要な時期になったことを示していると言えるのかも知れません。

 Fタームリストのテーマ名の横に対応するFIの範囲が書かれています。つまりあるFIが付与された案件にはそれに対応するテーマコードのFタームしか付与されません。しかしFIのなかには対応するFタームのテーマがないものもあります。その場合はFI、IPCの分類のみとなります。逆にFタームが付与されている場合は必ず対応するFI、IPCの分類があります。

 日本の特許を調べるにはFIとFタームを使い分けるのがいいと思います。IPCと同じ考え方のFIはその特許の発明についての分類、すなわち請求項に記載されている事項について付与されているはずです。一方Fタームは従来技術を除いて明細書に書かれている内容については原則としてすべて付与されます。極端に言えば一言でも言及されていたら付与するとされます。

 一般にはFIは大括りの分類で、Fタームは細かい分類と考えられますが、FIとFタームをよく見比べてみると、技術によっては意外にFIの方に適当な分類があり、Fタームにはよいタームがない場合もあります。半導体デバイスの場合はあまり特殊なケースはないと思いますが、化学物質関連などにはさらに特別な分類方法が採用されている場合があり、注意が必要です。

CPC

 外国の特許分類について最後に触れておきます。上記のようにIPCは国際的に通用しますが、アメリカとヨーロッパにもそれぞれ独自の分類がありました。アメリカはUSPC,ヨーロッパはECLAという分類です。ECLAは日本のFIと同様にIPCと同じ考え方の分類体系ですが、USPCはこれもアメリカらしく、まったく独自の体系でした。最近になってアメリカとヨーロッパは分類を統一しました。これをCPC(Cooperative Patent Classification)と呼んでいます。CPCもIPCと同様の体系です。

 比較的新しい公報でもアメリカ特許にはUSPC,ヨーロッパ特許にはECLAの分類が記されていますが、すでに両方ともCPCで検索できるようになっているはずです。特許庁はIPC、FI、CPCの対応表を提供しています。

 もちろん日本の特許庁はCPCの付与を行っていませんので、特許庁のデータベースではCPCによる検索はできません。日本の特許庁のデータベースにも多くの外国特許も収録されていますが、これらは番号照会しかできません。

 CPCでの検索を行うにはヨーロッパ特許庁のデータベースを検索できる"ESPACENET"というサイトが使いやすいと思います。主な説明は日本語で読むことができます。トップページ左上にある「分類検索」を選ぶとA~Hの分類説明が表示されます。右側の「S}をクリックするとCPCの詳細な説明が表示されます(これは英語です)。

 このESPACENETの「分類検索」の上にある「高度な検索」を選ぶと、いろいろな書誌事項や技術用語を使って検索を行うページが表示されます。ここの下の方にCPCの分類も入力できるようになっています。ただし検索は英語で行う必要があります。