光デバイス/半導体レーザ
56.画像形成装置
光通信、光ディスク以外にも我々の身の回りには半導体レーザを応用した製品があります。
半導体レーザを利用している装置として、まずレーザプリンタあるいは複写機があります。「あるいは」と書いたのは印刷装置部分についてはこの2つの装置はほとんど同じだからです。
ただ印刷装置すべてがレーザを使っているかというとそうでないことはご存じの通りです。LEDプリンタというレーザの代わりに発光ダイオードを使っているものがありますが、これはあまり普及していないようです。現在、個人が家庭で使うような小型のプリンタの多くはインクジェット式で、これは発光素子を使う電子写真式ではありません。
文字や画像の印刷が必要な装置には、プリンタ、複写機の他に、ファクシミリもあります。これらは印刷するための文字や画像の情報がどうやって作られるかが違い、印刷自体は同じようにされています。
プリンタはコンピュータなどによって文字や画像を表す電気信号を作りますが、複写機は紙に書かれた原稿に光を当て、部分部分の反射光を受光素子で受けて電気信号に変換します。その電気信号に従って印刷を行うところは共通です。
ファクシミリを受信するときは電話回線を伝わって送られてきた電気信号を印字するだけですからプリンタと同じです。送信するときは原稿に光を当てて読み取り電気信号に変える複写機と同じはたらきをします。ついでにスキャナという装置もあります。これは複写機やファクシミリと同じように原稿を電気信号に変えるはたらきをしますが、それをコンピュータなどに送るだけで印刷機能は装置に含まれません。
以上のようにプリンタ、複写機、ファクシミリは印刷装置部分が共通です。これをまとめて画像形成装置ということがあります。ついでに複写機、ファクシミリ、スキャナは光を当てて原稿を読み取る部分が共通ですが、これを画像読取装置ということがあります。これらの装置はこのように共通部分を多くもっているので、全部をひとつにまとめた複合機という製品が作られています。
レーザによる印刷の原理は電子写真式と言われるもので、装置は図56-1のようなものです(1)。感光ドラムの表面には感光体といって光が当たるとその部分だけ帯電する材料の膜が着けられています。印刷したい文字や画像の通りに感光体に光を当て(露光すると言います)そこに炭素の粉(トナー)をふりかけると帯電した部分にだけトナーが吸い着けられます。これを紙に写しとり剥がれないように処理すれば印刷ができるという仕組みです。
感光体にどうやって文字や画像にしたがったレーザ光を当てるかですが、使うのは一つの半導体レーザです。1本の光線をそのまま感光ドラムに当てても点にしかなりません。そこで光線を横に動かして感光ドラム上に直線状に光を投影します。そうするために鏡を回して角度を変えながら光線を反射させます(走査またはスキャンすると言います)。
実際には図56-1のようにポリゴンミラーという8面にミラーがついた多面鏡を回転させます。一方、印刷する文字や画像の電気信号にしたがって半導体レーザをオンオフさせると、感光ドラム上に点線状に帯電した部分を作ることができます。ミラーが回転してつぎの直線が描かれるのに合わせて回転ドラムが回転し、次の電気信号にしたがって重ならないように新たな直線部分が帯電されます。これを繰り返しながら1枚分の画像が形成されます。ミラーの回転、感光ドラムの回転、電気信号の3つがうまくタイミングをとって動作しないと望みの画像は印刷できません。
以上の原理からレーザは必ずしも半導体レーザである必要はなく、かつてはHe-Neレーザなどのガスレーザが使われた装置もありました。しかし半導体レーザを使えば装置を小型にできること、光の変調(オンオフ)が簡単なことなど利点があり、今では半導体レーザを使うのが普通です。
(1)特開昭58-207019号
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