電子デバイス/電界効果トランジスタ

7.縦型FET

 ここまで述べてきた電界効果トランジスタ(FET)は基板表面上の半導体層の面に沿ってチャンネルを形成したものでした。このチャンネルを流れる電流の制御はしたがってこのチャンネルに垂直方向に電界がかかる方向に設けられていました。ほとんどのFETはこのタイプで、これを敢えて区別する場合は横型FETと言います。

 ここで取り上げる縦型FETはソース電極とドレイン電極を素子の上下に設けた構造をもっています。電流は基板表面に対して垂直な方向に流れます。基本的な構造を示すと図7-1のようになります(1)

 素子表面にソース電極が設けられ、基板裏面にドレイン電極が設けられます。電流を制御するゲート電極は半導体層に溝(トレンチ)を設け、溝側面にゲート絶縁膜とゲート電極を設けています。チャンネル層は絶縁膜と半導体層の界面となる側面にできます。

 この例はGaN系ですが、もちろんSi系でも実現できるIGFETの一種と言えます。IGFETの方に分類すべきかもしれませんが、ここでは敢えてその他のFETに分類しました。

 縦型FETはもちろんHEMTにも適用できます。図7-1同様にトレンチ側面に2DEG層を形成し、トレンチの上面に設けたゲート電極に負のバイアスをかけ、2DEG層の電子が基板裏面にあるドレイン電極の方向に向かうようにします(2)

 また図7-2に示すように横型HEMTと同じように2DEG層を曲げずに基板面に平行な面のままとし、電子をこの層から離れて基板裏面に向かうような構造とすることもできます(3)

 とくにGaN系HEMTは高耐圧が期待される素子です。縦型は高耐圧化に適した構造であることが大きな特徴です。横型では素子表面の平面上に電極が並んでいるため、電極間の絶縁耐圧を上げるために前項で述べたような対策が採られますが、基本的に同一平面上にかかる電界に対しての対策には限界があります。

 これに対して縦型は基板の両側に電極が設けられるため、素子外表面上の電極間距離は長くとれます。耐圧は半導体の絶縁破壊電圧によって決まってくると考えられ、耐圧の改善が期待できます。

 一方、GaN系HEMTでは基板材料が問題となります。チャンネルを流れる電流は基板を通って流れることになり、したがって基板が導電性であることは必須です。シリコンなど例え導電性であっても半導体層との間にバッファ層が必要であると、電流の流れにとっては好ましくありません。

 ここで前々項で述べたようにGaN基板の重要性が出てきます。縦型を実現するためにはGaN基板であることが必要と言えます。低抵抗、大面積のGaN基板を得る方法はまだ未解決の課題ですが、今後が期待されます。

(1)特開2008-227074号

(2)特開2006-286942号

(3)特開2009-032873号