産業/色彩の話

15.色度図上での混色の表現

 \(\mathrm{XYZ}\) 表色系での混色の表し方は既に説明していますが、もう一度書くとつぎのようになります。2つの色 \(\mathrm{F}_1 \)、\(\mathrm{F}_2 \) をまぜると \(\mathrm{F}\) という色が得られるとします。\(\mathrm{F}_1 \) の \(\mathrm{XYZ}\) 座標を \(\left ( X_1,Y_1,Z_1 \right )\)、\(\mathrm{F}_2 \) の座標を \(\left (X_{2},Y_{2},Z_{2}\right )\) とすると \(\mathrm{F}\) の座標は \(\left (X_{1}+X_{2},Y_{1}+Y_{2},Z_{1}+Z_{2}\right )\) となります。

 これは図15-1に示すように \(\mathrm{XYZ}\) 空間において \(\mathrm{F}_1\) というベクトルと \(\mathrm{F}_2\) というベクトルの和がベクトル \(\mathrm{F}\) になるということを意味します(グラスマンの法則)。2つのベクトル \(\mathrm{F}_1\)、\(\mathrm{F}_2\) が作る平面内に和のベクトル \(\mathrm{F}\) もあり、\(\mathrm{F}\)は2つのベクトルを隣合う2辺とする平行四辺形の対角線になります。

\[\begin{align}x &= \frac{X}{X+Y+Z} \\ y &= \frac{Y}{X+Y+Z} \\ z &= \frac{Z}{X+Y+Z}\end{align}\] と規格化した \(xyz\) 系では \(x+y+z=1\) の関係があるので、上記ベクトル \(\mathrm{F}_{1}\)、\(\mathrm{F}_{2}\)、\(\mathrm{F}\) が \[X+Y+Z=1\] で表される面と交わる点を \(\mathrm{f}_1 \left ( x_{1},y_{1} \right )\)、\(\mathrm{f}_2 \left ( x_{2},y_{2} \right )\)、\(f \left ( x,y \right )\) とすると、この3点は1直線上にあります。

 この空間の直線を \(xy\) 平面にまっすぐ投影しても(射影といいます)直線関係は変わりませんから、\(\mathrm{xy}\) 色度図上でもこの3点は直線上にあることになります。つまり \(\mathrm{xy}\) 色度図上の2点で表される2つの色を混ぜると、混ぜた色はその2点を結ぶ直線上の点で表されます。

 混ぜた色の座標が直線上のどの位置に来るかは2色の強さの比によって決まります。図15-1で例えば \(F_1\) だけ強度を上げて \(F'_1\) とすると、\(F'_1\) と \(F_2\) の和 \(F'\) は依然として同じ平面上にあり、このため \(X+Y+Z=1\) の平面との交点は同じ直線上で位置だけが変わった \(f'\left ( x',y'\right )\) にくることになります。

 2色を混合して白色を得たい場合には、図15-2に示す色度図の白色部分、例えば等エネルギースペクトルに対応する点 \(W \left ( 1/3,1/3 \right )\)、を通るような直線上にあり、\(W\) の両側にある座標をもつ2色、例えば図の \(F_y\) と \(F_b\) を混色すればよいことになります。この関係にある2つの色を補色の関係にあると言います。

 いまある色、例えば図15-2の \(\mathrm{F}_g\) の色度座標点と白色の色度座標点 \(\mathrm{W}\) を結ぶ直線を引き、これを伸ばして色度図の縁と交わる点 \(\mathrm{S}\) を求めます。この点が波長 \(\lambda_s \)(図の例ではおよそ520nm)の光に相当する場合、この波長 \(\lambda_s \) を色 \(\mathrm{F}_g \) の主波長と呼びます。

 この直線上を点 \(\mathrm{S}\) から \(\mathrm{W}\) まで辿るにつれて、色は純色から次第に白っぽくなり彩度が低下することになります。そこで白色の点から縁までの距離に対する白色の点から色 \(\mathrm{F}\) の点までの距離の比を刺激純度と定義しています。式で書けば、白色点 \(\mathrm{W}\) の座標を \(\left ( x_{w},y_{w} \right )\)、主波長の点 \(\mathrm{S}\) の座標を \(\left ( x_{s},y_{s} \right )\) とすると、点 \(\left ( x,y \right )\) の刺激純度 \(p_e \) は \[p_{e}=\frac{x-x_{w}}{x_{s}-x_{w}}=\frac{y-y_{w}}{y_{s}-y_{w}}\] と書けます。

 しかし赤紫側にある点、例えば \(\mathrm{F}_p \) では白色から延長した直線は赤紫線に交わり、この場合は主波長が定義できません。この場合は直線を反対方向に伸ばして縁との交点 \(\mathrm{S}'\) を求め、その波長を補色主波長と呼びます。この場合も刺激純度は上式で計算します。