産業/色彩の話

13. 改良した色度図(その2)-\(\mathrm{Lab}\)色空間

 CIEでは \(\mathrm{u}'\mathrm{v}'\) 系を制定した1976年に \(\mathrm{L}*\mathrm{a}*\mathrm{b}*\) 系という色空間も制定しています。これも色空間のなかで色差が均等になることを重視した色の表現方法です。この表示が使われることもあるので、概略を紹介しておきます。

 この色空間はCIEが独自で開発したものではなく、ハンター(R.S.Hunter)という人が1948年に提案した色空間を改良したものです。ハンター\(\mathrm{Lab}\) 系と区別するために*をつけて \(\mathrm{L}*\mathrm{a}*\mathrm{b}*\) 系としたようですが、\(\mathrm{CIELab}\) と呼ぶ場合もあります。

 \(\mathrm{Lab}\) 系の考え方の基本は \(a\) 軸と \(b\) 軸という直交座標の両端に赤色と緑色、青色と黄色の補色を配していることと \(a\) 軸と\(b\) 軸がつくる平面と直交する方向に明度(輝度)\(L\) の軸をとっていることです。イメージとしては図13-1のような3次元空間となります。ある \(L\) のところの \(ab\) 平面上にその輝度における色が示されることになり、その面上での2色の差は面上での2点間の距離に一致します。

 三刺激値 \(X,Y,Z\) から \(\mathrm{L}*\mathrm{a}*\mathrm{b}*\) への変換式はつぎのようになります。 \[\begin{align} L^{\ast } &= 116f\left ( \frac{Y}{Y_{w}} \right )-16 \\ a^{\ast } &= 500\left [ f\left ( \frac{X}{X_{w}} \right )-f\left ( \frac{Y}{Y_{w}} \right ) \right ] \\ b^{\ast } &= 200\left [ f\left ( \frac{Y}{Y_{w}} \right )-f\left ( \frac{Z}{Z_{w}} \right ) \right ]\end{align}\] ここで関数 \(f\) は \[\begin{align}f\left ( t \right ) &= t^{\frac{1}{3}}~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\left ( 6/29 \right )^{3}< t \\ &=\frac{1}{3}\left ( \frac{29}{6} \right )^{2}t+\frac{4}{29}~~~~~~~~~~t\leq \left ( 6/29 \right )^{3}\end{align}\] と定義されています。また、\(X_w \)、\(Y_w \)、\(Z_w \) は基準となっている白色の三刺激値です。\(f\) の式が2つに場合分けされているのは、 \(t=0\) のときに勾配が無限大になるのを防ぐためで、\(t\) が 0 に近いところでは \(f\) は1次関数になるように式が作られています。

 例によって"ColorAC"を使って着色した図を描いてみます。図13-2~5は \(\mathrm{sRGB} \) の3原色で表される範囲で、\(L\) を一定にした図です。座標 \(\left ( a*,b* \right ) = \left (0,0 \right )\) の点が無彩色になり、\(L\) の変化によりその輝度が変化するにつれ、周囲の色彩の輝度も変化しているのわかります。