産業/色彩の話

10.色の表示

 \(\mathrm{XYZ}\) 表色系で色を表示する方法は基本的には \(\mathrm{RGB}\) 表色系と同じです。  色 \(\mathrm{F}\) の \(\mathrm{XYZ}\) 系における等色式は \(\mathrm{RGB}\) 系と同様に \[\mathrm{F}=X\mathrm{X}+Y\mathrm{Y}+Z\mathrm{Z}\] と書けます。2つの色を \(\mathrm{F}_{1}\)、\(\mathrm{F}_{2}\) とし、 \[\mathrm{F}_{1}=X_{1}\mathrm{X}+Y_{1}\mathrm{Y}+Z_{1}\mathrm{Z}\] \[\mathrm{F}_{2}=X_{2}\mathrm{X}+Y_{2}\mathrm{Y}+Z_{2}\mathrm{Z}\] と表すとすると、この2色を混ぜた色 \(\mathrm{F}\) は \[\mathrm{F}=\mathrm{F}_{1}+\mathrm{F}_{2}=\left ( X_{1}+X_{2} \right )\mathrm{X}+\left ( Y_{1}+Y_{2} \right )\mathrm{Y}+\left ( Z_{1}+Z_{2} \right )\mathrm{Z}\] とベクトル和で表せ、\(\mathrm{RGB}\) 系で述べたグラスマンの法則が成り立ちます(7項参照)。

 \(\mathrm{XYZ}\) 表色系で一般の色の表示する、つまり三刺激値 \(X\)、\(Y\)、\(Z\) を求める方法ですが、基礎刺激に当たる \(\mathrm{X}\)、\(\mathrm{Y}\)、\(\mathrm{Z}\) は実際にある色ではないので、これを使って等色実験はできません。このため、実験は \(\mathrm{R}\)、\(\mathrm{G}\)、\(\mathrm{B}\) を使って行い、三刺激値 \(R\)、\(G\)、\(B\) を求め、これを前項で掲げた \(\mathrm{XYZ}\) 系と \(\mathrm{RGB}\) の変換式を使って \(X\)、\(Y\)、\(Z\)を求めることになります。

 一方、これも前項の図で示した等色関数を使えば、計算によって三刺激値 \(X\)、\(Y\)、\(Z\) を求めることができます。これも \(\mathrm{RGB}\) 系で示したのと同様な方法です。

 実在の光源の光は単一波長ではなくいろいろな波長を含みますから、まずそのスペクトルを測定し、分光放射パワー \(s_{\lambda}\) という量で表します。波長 \(\lambda \) における3つの等色関数の値に、同じ波長 \(\lambda \) におけるこの \(s_{\lambda}\) の値をそれぞれかけたものが刺激値に比例します。したがって光源の光の色の三刺激値はこれら各波長の値を全可視光波長域で積分して求めます。 \[X=K\int_{\lambda }\overline{{x}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\] \[Y=K\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\] \[Z=K\int_{\lambda }\overline{{z}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\]

 ここで \(K\) はこれも以前に説明していますが、最大視感度と呼ばれる定数で、683 lm/W(ルーメン/ワット)という値をもっています。\(s_{\lambda}\) は物理量でワットの単位をもっており、一方、\(X\)、\(Y\)、\(Z\) は人間の眼の感度を含む測光量で表すので、\(K\) はこれをつなぐ定数となります。

 一方、光源からの光が物体に当たって反射される場合、つまり物体の色の場合は、さらに物体がどんな波長の光をどの程度反射するかを表す分光反射率 \(\rho_{\lambda}\) がかかってきます。 \[X=K\int_{\lambda }\overline{{x}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\] \[Y=K\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\] \[Z=K\int_{\lambda }\overline{{z}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda\]

 これに明度の情報を入れるために、もっとも明るい白色の表面の \(Y\) の値で割ってパーセント表示をします。白い表面の \(\rho_{\lambda}\) は1ですから \[X=\frac{\int_{\lambda }\overline{{x}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda}{\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda } \times 100\left (\% \right )\]\[Y=\frac{\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda}{\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda } \times 100\left (\% \right )\] \[Z=\frac{\int_{\lambda }\overline{{z}_{\lambda }}s_{\lambda }\rho_{\lambda }\mathrm{d}\lambda}{\int_{\lambda }\overline{{y}_{\lambda }}s_{\lambda }\mathrm{d}\lambda } \times 100\left (\% \right )\] が得られます。白色の物体表面の \(Y\) 値は100になり、一般の試料表面の \(Y\) の値によってどのくらいの明るさかがわかります。