産業/色彩の話

2.色彩の3要素

 色はあくまで人間の眼と脳が感じる感覚ですが、その感覚は非常に鋭く、非常に微妙な色の違いを見分けることができます。ということは色の種類はほとんど無限に近く存在することになります。

 何らかの基準でこの微妙な無数の色のちがいを規定しないと、日常生活でも色を選んで他人に伝えることができず大変不便です。色彩理論は色に系統的な名前(背番号)を付けて指定できるようにすることを目的にしていると言ってもいいでしょう。

 まず色の違いをどう整理するかが問題になります。結論から言うと、色を3つの要素で整理します。この3要素とは「色相」と「明度」(または「輝度」)と「彩度」の3つです。

 色相とは色あいのことです。つまり赤いとか青いという色の違いのことです。これは基本的には光の波長の違いに対応しています。ただし単一波長というのは理想的な概念で、レーザ光のようにかなり単一波長に近い光もありますが、自然界の光はいろいろな波長を含んでいるのが普通で、単純に色を波長で置き換えることはできません。

 一見、色彩は色相で整理すれば済むように思われますが、同じ色相でも白っぽい、あるいは黒っぽいという違いがあります。この白っぽさの程度、白みの強さを表すのに明度という基準が設けられています。白っぽい色は明度が高く、黒っぽい色は明度が低いことになります。

 さらに同じ色相、同じ明度でも鮮やかさで色の違いが感じられます。この鮮やかさの程度を示すのが彩度です。別の言い方では色みの強いほど彩度が高いとも言います。彩度が下がるということは色みが薄れ、鈍くなることで、彩度が最低になると灰色のような無彩色になります。

 以上の説明で理解いただけるでしょうか。色に詳しい方は別として普通は何となくわかるけれども、どうもはっきりしないのではないでしょうか。人間の視覚をもとに色のちがいを表しているので、言葉で定義するのは難しいのです。

 そこで実際の色を見ていただくのがいいと思います。色の基準を定めているものは色票と呼ばれます。色のついた厚紙のようなものです。これは学校の図工室(美術室)にはあるかもしれませんが、手元で簡単に見られるものではないでしょう。

 色票の替わりに色を見るのによい簡単な方法があります。それはPC用の描画ソフトを使う方法です。このような描画ソフトは当然色を塗る機能を備えていますが、簡単に色を選べるように「パレット」などと呼ばれる色の一覧表のようなものが用意され、このなかから塗りたい色を選べます。しかし一覧にない色を使いたい場合もあり、このような場合のために、何らかの数値で色を指定する機能がだいたい備えられているはずです。これを利用すると理論に沿った色の変化を実際に体験することができます。

 まず色相ですが、これを表すのに色相環といって輪のように色を並べて示す方法があります。次の項で触れるマンセル表色系ではこの方法が使われています。図2-1は円周を10等分して10色を示したものです。まず基本の5色、赤(R, Red)、黄(Y, Yellow)、緑(G, Green)、青(B, Blue)、紫(P, Purple)で円周を5等分し、各色の中間にもう一色ずつ加えて10色としてあります。さらに中間に色を加えていけばどんどん色の数は増えていきます。

 人に何色かの色票を渡して順番に並べるように求めるとほぼ誰でも間違いなく、円か直線かは別にして、順番はこの図のように並べるそうです(前回紹介した「どうして色は見えるのか」参照)。2つの色が似ている(近い)か、似ていない(遠い)かは、誰の感覚のなかにも共通にあり判断ができるようです。

 一例ですが、「GIMP」というフリーソフトには上記の色相、明度、彩度を自由に変更して色を出す機能があります。これを使ってサンプルを作ってみました。図2-2はRGB3色について明度を変化させたものです。白から黒までの無彩色の明度の変化も下に合わせて示しました。

 図2-3は彩度の変化です。一番右側がもっとも鮮やかな色で左側が無彩色になっています。

 この変化を感じていただけるでしょうか。これをベースにつぎは色に背番号を付けることができます。