光デバイス/発光ダイオード

 31.発光ダイオードのパッケージ

 この項から5項で挙げた課題の4番目、実装についての話に移ります。実装、英語ではマウントとは、おおよそつぎのような技術です。

 発光ダイオードに限らず半導体デバイスは小さな半導体チップ(ダイとかペレットとか言うこともある)からなり、それに電気的な接続をして動作させます。空気中でも動作させることはできますが、何かが触れると電気的接続が切れてしまったり、水や埃が落ちれば壊れてしまうこともあります。長く安定して動作させるためには容器(パッケージ)のなかに入れて、外部からの接触を避け、水や埃を避ける方が望ましいのです。

 パッケージに入った半導体デバイスは人が指やピンセットなどで扱うことができるようになり、容易にプリント基板に半田付けができます。言い換えれば一般の電子部品と同様に扱えるようになります。もちろん工場のラインで大量に扱う場合も問題ありません。

 パッケージの主な役割は
1.半導体チップを機械的に支えること、
2.半導体チップに電気的な接続をとり、外部の電気回路へ接続できるようにすること、
3.半導体チップを外気から遮断すること、
などの役割をもっています。発光デバイスの場合はこれに加えて
4.必要な性質をもった光を効率的に取り出せるようにすること、
5.半導体チップが過熱しないように放熱をすること、
などの役割もあります。

 これらたくさんの役割をどう実現するのかについてこれから紹介していきますが、この項では外観としてどんなパッケージが使われているのかを見ておきます。

 単体または少数の発光ダイオード用パッケージは大きく分けて 「挿入実装型」、「表面実装型」の2種類に分けられます。多数の発光ダイオードを実装するパッケージの場合は、だいぶ話が違いますので、別途扱います。

 さてこの分け方ですが、発光ダイオードを実装したパッケージをプリント基板に取り付ける仕方の違いによって分けています、挿入実装型とはプリント基板に開けた孔にリード線を挿入して半田付けをするようにリード線が下へ向かって延びているようなタイプです。一方、表面実装型は基板のプリント配線上に端子を載せるように置いて半田付け固定するようなタイプです。

 歴史的にみると初期の発光ダイオードは挿入実装型です。これはプリント基板に実装する他の部品、例えば抵抗やコンデンサやトランジスタ等がいずれも挿入実装型であったためです。

 その後、プリント基板上の実装密度が上がるにつれ、半導体デバイスはIC化し、抵抗やコンデンサはチップ型が使われるようになりました。これに伴って発光ダイオードにも表面実装型(チップ型ともいう)が使われるようになりました。特許図面を使って典型的なパッケージの形を紹介します。

1.挿入実装型  挿入実装型として現在でも多く使われているのは砲弾型といわれるものです。その一例の斜視図を図31-1に示します(特開昭57-4182より)。このタイプは電流を流すための2本のリード1、2をもち、その一方1の上部に発光ダイオードチップ5を載せ、このチップの下部がリード1に電気的につながるように接着します。発光ダイオードの上部電極を細い電線6で他方のリード2につなぎます。2本のリードの上部を透明樹脂7で固め、2本のリードの下部を樹脂の外に出します。

 砲弾型という少し物騒な名前はこの透明樹脂の形からきています。この透明樹脂は封止部材と呼ばれ、発光ダイオードチップと細い電線への外部からの接触や水分、埃などから保護する役目をします。下側に露出したリードに電源をつないで適切な電流を流せば、発光ダイオードを発光させることができます。この透明樹脂部の大きさは高さが5mmくらい、直径が2,3mmくらいで小さいですが、十分に指で摘める大きさです。

 このような透明樹脂で主要部を固めるという方法は1970年代には使われていましたが、初期はいろいろな形のものがあったようです。現在では大体図31-1のような外観のものに落ち着いてきています。電子部品のひとつとして手軽に扱えるタイプです。

 この砲弾型が普及するより前にはステムと呼ばれる金属の基台の上に発光ダイオードチップを接着するタイプが使われていました。外観の斜視図を図31-2の左側に示します(特開昭49-71886より)。ステム(ここではヘッダと呼ばれています)13を貫通したリード16の上端に発光ダイオード11の上部電極を細い電線で結びます。

 チップと細線は砲弾型と同じように透明樹脂で固める場合もありますが、金属製のカバー(キャップ)21を被せる場合もあります。カバーには窓を設けて光が通るようにする必要があります。ここでは窓部をレンズ22にして光を集光するようにしています。またカバーの中には外気が流通しないようにカバーとステムは気密封止をします。

 このタイプはステムとカバーを用意しなければならないことに加え、図31-2の右側のステムの断面図に示されるように、ステム13には一方のリード線16をステムと絶縁するための絶縁体17を設けなければならず、さらにカバーは窓となる透明部材との間が気密に保たれるようにする必要があります。これは作るのにかなり手間がかかりチップが安くなった場合にはパッケージの方が高価になってしまいます。半導体レーザのパッケージとしてはまだ使われていると思いますが、発光ダイオード用としては特殊なものは別にして、ほとんど使われなくなりました。

2.表面実装型  表面実装型の外観の一例を図31-3に示します(特開2002-223003より)。表面実装型の場合、発光ダイオードチップを載せるのはリードの上の場合と平板状の基板の上の場合とがありますが、図は前者の場合の例です。左側が斜視図、右側はA-A'で切った断面図です。斜視図の方には発光ダイオードチップが省略されています。

 一対のリード21、22の片方22に発光ダイオードチップ30が載っています。両方のリード21、22は成形樹脂製の本体10によって固定されて端が横方向に突出した後、下側に曲げられ本体の下側へ回っています。この裏へ回った部分を外部回路基板の表面に半田付けなどで取り付けることができます。

 本体はチップの上部を覆わずに孔(凹部)14が設けられ、その底の部分にチップが置かれています。この凹部は透明樹脂で埋められ、チップが保護されます。凹部の内面の斜面は光を反射する材料で作られれば、発光ダイオードから斜め横方向に出る光を上方に反射し、光をより上部に取り出すことができます。