産業/標準化
1.はじめに
「標準化」という語はそれほど一般的ではないと思われます。これに比べると「JIS(ジス)」という略語は比較的よく知られているようです。これはJISマークによるところが大きいと思われます。近年は見かける機会が減りましたが、かつてはこのマークが付いている製品であれば、安心できると思っている人が多かったと思われます。
このJISマークは勝手に付けていいものではなく、その製品がある規格を満たしていることが認証された場合に付けることが認められます。規格の中身はともかくとして、国の認証を受けているので、品質的に優れているだろうとみなされていたわけです。
この「ある規格」というのがJISです。"Japan Industrial Standard"の略で、日本語では「日本産業規格」(長らく「日本工業規格」でしたが、2019年に呼称が改められました)です。JISには非常に多くの種類の規格が含まれており、それぞれの規格にJIS C 7030などと言った番号が付けられて分類、整理されています。各規格は時代の変化はありますが一定の様式に沿ったひとまとまりの文書(図表を含む)です。
ではこの規格というのは何のために作られているのでしょうか。簡単な例で説明します。町へ出て少し交通が盛んな所に行くと、交通信号があります。交通信号は青(実際は緑)が「進め」で、赤が「止まれ」の意味であることは日本中どこでも同じでだれでも知っています。海外旅行をしたことのある方なら、外国でも同じ決まりだったことを知っておられるでしょう。
これはこのように決めてあるからこそ交通事故が防げるわけです。日本国内、さらには世界中で同じ色で同じことを示すようににしておけば、どこへ行っても、例え言葉がわからない国へ行っても間違いが起こりません。このように何かの目的で決め事をし、明文化したものが規格です。ただし工業規格とか産業規格という呼び方の通り、JISは技術的な決め事が対象です。
「標準化」というのはこの「規格の内容を決める作業をすること」と言ってよいでしょう。規格と標準は厳密に言うと少し違うようですが、大雑把には同じ意味です。
このような規格を定めるのは、もちろん上記のようにいいこと、利点があるからです。どういういいことがあるかを説明するには実例をあげるのがよいと思いますので、後の項ではJISからいくつかの例をとって説明したいと思います。
ここは半導体の話をするページですので、標準化も半導体に関わるものを中心に紹介したいところですが、実は半導体デバイスに関する規格はあまり多くありません。これはなぜなのか、についても後で触れたいと思います。
まずは実例を紹介するうえで、最低限必要な知識を整理することから始めます。