科学・基礎/半導体物理学
37.伝導帯の電子密度

 伝導帯の伝導電子の数を求めるため、34~36項にわたって

   伝導電子の数=伝導帯の状態密度×エネルギー分布

の式の右辺の伝導帯の状態密度 \(D\) とエネルギー分布 \(f\) をそれぞれ求めました。もう一度式を書くと次の通りです。    \[D\left ( E \right )= \frac{1}{2\pi ^{2}}\left ( \frac{\sqrt{2m}}{\hbar} \right )^{3}\sqrt{E}\tag{1}\]    \[f\left ( E \right )= \frac{1}{\exp \left \lbrace \left ( E-E_{F} \right )/k_{B}T \right \rbrace+1}\tag{2}\]

 これを用いて伝導帯の電子密度 \(n\) を求めます。状態密度 \(D\) とエネルギー分布 \(f\) はともにエネルギー \(E\) の関数ですから、伝導帯全体の電子密度を求めるには \(E\) について積分を行う必要があります。積分区間は、エネルギーの基準を伝導帯の最低のエネルギー(伝導帯の底のエネルギーということがあります) \(E_{c}\) にとるので、\(E_{c}\) から無限大にします。    \[n= \int_{E_{c}}^{\infty }f\left ( E \right )D\left ( E \right )dE\tag{3}\]

 (3)式に(1)、(2)式を代入して求められる電子密度 \(n\) のエネルギー分布のイメージを図37-1に示します。赤く示したロウソクの炎のような形が電子密度のエネルギー分布を示しています。伝導帯の底付近のエネルギーのもっとも低い部分の電子密度がもっとも大きくなっていますが、エネルギーの低い電子がもっとも多くなるのは常識にかなっていると言えるでしょう。

 具体的な計算を行うために、(3)式に(1)、(2)式を代入し、少し整理をするとつぎのようになります。    \[n= \frac{8\sqrt{2}\pi }{\hbar^{3}}\left ( m^{*} \right )^{3/2}\exp \left ( \frac{E_{F}}{kT} \right ) \int_{E_{c}}^{\infty } \sqrt{E-E_{c}}\exp \left ( -\frac{E}{kT} \right )dE\tag{4}\] ここで電子の質量は有効質量 \(m^{*}\) としました。有効質量を用いるのはエネルギーと波数の関係    \[E= \frac{\hbar^{2}}{2m}k^{2}\] が実際にはこの式から少しずれる場合があり、これを補正するために電子の質量を少し変わったとすると便利なためです。また実際の積分計算を行うため、(2)式は    \[f_{B}\left ( E \right )= \frac{1}{\exp \left \lbrace \left ( E-E_{F} \right )/kT \right\rbrace} \]と、つまりボルツマン分布で近似しました。

 積分の計算は    \[x= \frac{E-E_{c}}{kT}\] という変数変換を行うと便利です。これを \(E\) で微分して    \[\frac{dx}{dE}= \frac{1}{kT}\] すなわち    \[dE= kTdx\] を用います。

 また \(x\) の積分範囲は 0 から \(\infty\) になります。すると(4)式の積分項はつぎのような形に変換されます。    \[\left ( kT\right )^{3/2}\exp \left ( -\frac{E_{c}}{kT} \right )\int_{0}^{\infty }\sqrt{x}\mathrm{e}^{-x}dx\] ここで上式の積分はつぎのようになるという公式があります。    \[\int_{0}^{\infty }\sqrt{x}\mathrm{e}^{-x}dx = \frac{\sqrt{\pi }}{2}\] これを使うと(4)式は    \[n= 2\left ( \frac{2\pi m^{*}k_{B}T}{\hbar^{2}} \right )^{\frac{3}{2}}\exp \left ( -\frac{E_{c}-E_{F}}{k_{B}T} \right )\tag{5}\] となります。

ここで    \[N_{c}\equiv 2\left ( \frac{2\pi m^{*}k_{B}T}{\hbar^{2}} \right )^{\frac{3}{2}}\] と置いて、(5)式を    \[n= N_{c}\exp \left ( -\frac{E_{c}-E_{F}}{k_{B}T} \right )\tag{6}\] と書くことができます。

 (6)式は伝導帯の底、すなわち \(E=E_{c}\) のところに状態密度 \(N_{c}\) が集中して存在し、これにボルツマン分布をかけたものが電子密度 \(n\) であるということを表しています。これを図示したのが図37-2です。このような意味で \(N_{c}\) を伝導帯の実効状態密度といいます。(6)式は近似式ですが、実際の電子密度の評価には役立つ式です。