科学・基礎/半導体物理学
5.光電気特性
半導体に特徴的な現象としては、前項の熱電気現象よりも光に絡む現象の方が、広くデバイスへの応用がなされています。
これらの光電気現象と応用デバイスについてはすでに別のところで詳しく取り上げていますので、繰り返しませんが、それらの発見の歴史について簡単にまとめておくことにします。
(1)光伝導
半導体の光伝導としては、1873 年にイギリスのスミス(W. Smith)がセレンについて光照射により電気抵抗が減少する事実を初めて観測しています。これはいわゆる内部光電効果ですが、外部光電効果はどうかというと、最初に現象に気付いたのは電磁波の発生実験を初めて行ったドイツのヘルツ(H. Hertz)で 1887 年のことです。
ヘルツは火花放電によって電磁波を発生させる実験を行ったのですが、この火花放電が紫外線を照射すると起こりやすいことを発見しました。しかしこの時点ではまだ電子の存在自体が明らかにはなっていないので、光によって電子が発生しているということまでが明らかにされたわけではありません。
金属表面から電子が飛び出していることを確認したのはドイツのレーナルト(F.Lenard)で 1900 年になってからのことです。これが 5 年後にアインシュタインの光量子仮説につながったということになります。
こうした流れを見ると、科学者たちは他人の研究成果に注目し、それをベースに次のステップの研究を行っているのがよく分かります。
(2)光起電力
光起電力は半導体内に内部電界がないと起こりません。言い換えると半導体内に何らかの接合がなければならないので、その点が光伝導と異なります。
この光起電力については 1876 年にイギリスのアダムス(W. G. Adams)とデイ(R. E. Day)によって初めて認められています。試料はセレンと金属を点接触させたものです。7 年後の 1883 年には早くもアメリカのフリッツ(C.E.Fritts)が点接触型でない面接触型(今で言えばプレーナ型)を作っています。半導体同士の接合は 20 世紀まで待たなければなりません。
以上からだけでも 19 世紀後半には半導体のいろいろな現象が次々と実験的に見つかっていったことが分かります。今ではこれらの現象は当たり前のように思われていますが、これを統一的に説明するためには、この時点からまだかなり大きなステップが必要でした。
そもそも「半導体」(semiconductor)という語はいつ頃から使われていたのか、あまりはっきりしません。定着したのは 20 世紀になってからのようです。量子力学による半導体の研究が進むようになった後も"semi-conductor"のようにハイフン入りで書かれていたりしますので、一つの専門用語として認知されたのは 20 世紀半ば近くになってからではないでしょうか。
.