産業/信頼性
1.はじめに

 日常会話では「あの人は信頼できるね」とか「あの会社は○○については信頼できるよ」とかいったフレーズをよく耳にすると思います。他の言い方をすれば「期待を裏切らない」という意味でもあるかと思います。

 半導体デバイスに対する信頼というのはもう少し限定された意味で、「故障しない」といった意味と言えます。半導体デバイスに限らず、工業製品一般、部品からそれを組み合わせたシステム製品まで同じようなことが言えます。

 今日まで長く正常に動作してきたから明日も大丈夫だろうと思いたいところですが、突然故障し寿命が尽きることもあり得ます。そうなると信頼して使ってきたのに裏切られたと感じることにもなるでしょう。とは言ってもどのような製品でも未来永劫正常に動作することはなく、いずれは故障し寿命が尽きます。ではいつ故障するか、それが問題です。これが予測できればその間はまず信頼でき、故障時への対処も行えます。

 半導体デバイスの信頼性とはどのくらいの長さ正常に動作するか、寿命が尽きるのはいつかを予測することと言えます。しかしまったく同じ方法、同じ条件で製造したものであっても故障する時間は一定ではありません。このような問題を数学的に扱うのが「確率」の概念です。確率は高校の数学でも教えられているのは周知の通りです。

 一方で半導体デバイスの寿命を測定するにはどうしたらよいでしょうか。ある条件でデバイスを動作させていつ故障するかを監視すればよいわけですが、実用製品はそう短時間では壊れませんから、実験には長時間を要し結果が出るまで待っていられないということになります。そこで加速試験という方法が考えられています。試験する環境の温度や湿度などを通常使用される条件より高く設定すれば寿命は短くなるであろうという考えです。ただこの場合、どの程度きつい条件にしたら寿命がどのくらい短くなるのかが明確でないといけません。これには故障が起こる過程を調べ明らかにする必要があります。このようなことをするのを故障解析とか故障物理などと言います。

 また普通の特性を測定するのと違って壊れるまでの試験ですから、すべての製品を調べるわけにはいきません。どのくらいの数を調べたら大体全体の様子を反映できるのか、推定する必要があります。このようなことを考えるのは統計学です。

 このように数学的確率や統計学によって寿命を推定する分野は「信頼性工学」という名前で呼ばれています。もちろん対象は半導体デバイスに限られるわけでなく、あらゆる工業製品、部品からそれを組み合わせたシステム製品まで、に適用されます。

 ここではこのような寿命推定の方法の基本的な部分を紹介し、また半導体デバイスに特有な故障原因についても触れます。

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