光デバイス/太陽電池
57.まとめ
2011年の震災による事故の後、国内のすべての原子力発電所の稼働が停止されたため、その後の電力供給手段をどうするか議論がなされましたが、この時点で頼れる代替手段は火力発電しかありませんでした。
しかし火力発電は燃料を輸入に頼らざるを得ず、CO2を発生するため地球温暖化の観点からも問題がありました。ここで改めて注目されたのが再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーには太陽光発電の他、風力、地熱、あるいは従来の水力など多くの種類がありますが、エネルギー供給の不安定さとコスト高が問題視されていました。
それでも再生可能エネルギーの電力会社による買い取り制度が作られ、2012年から実際の買い取りが始まりました。この買い取り条件(金額)が当初かなり販売者側に有利なものであったこともあり、太陽光発電システムの設置、建設がかなり推進された経緯があります。
この辺りの社会的動きや統計データは(独)新エネルギー・産業技術綜合開発機構(NEDO)の発行している白書(1)に多岐にわたってまとめられています。
この2010年前後は国際的にも太陽光発電の導入が進んだ時期です。これは上記の地球温暖化対策の気運の盛り上がりとシリコン系太陽電池技術の成熟によっていると思われます。
しかし日本ではその後、石炭火力の導入と原子力への回帰が進められ、再生可能エネルギーの買い取り価格が年々低下する方向に逆戻りし、国際的にも問題視される状態になっています。
太陽電池はエネルギー供給という社会的に重要な役割をもっている点で他の半導体デバイスとは違った特徴をもっていることがお分かりいただけたかと思います。
(1)NEDO再生可能エネルギー技術白書(2014)、第2章