光デバイス/受光素子
17.光検出回路
ここまでの項で受光素子の構造、形態を説明してきましたが、どのようにして使うのかについてはあまり触れてきませんでした。どのような半導体素子であっても外部に回路をつないで電圧をかけ、電流を流さないと機能しません。必ず外部回路が必要です。
受光素子の場合、そもそも光が来ているのかどうか、来ているとすればどのような強さか、時間とともにどのように変化しているか等々を出力によって知るのが目的ですから、このような目的を果たすための回路を接続する必要があります。
元来、受光素子のための外部回路は複雑なものは必要なく、受光素子を流れる電流を検出するための単純な回路で十分です。ここでは2、3の基本的な回路について紹介します。
もっとも単純で基本的な光検出のための回路は図17-1に示すように受光素子PDに逆バイアスVdをかけ、抵抗Rを直列に接続します。光が受光素子に当たれば、光電流が流れ、抵抗両端にこの電流に比例した電圧が発生します。光の強度と光電流の大きさの関係は予め測定しておかなければなりません。製品の受光素子であればデータが付いているはずです。
この回路にはつぎのような問題があります。光電流の大きさによって抵抗Rの両端の電圧が変化しますが、受光素子と抵抗の直列回路に一定の電圧がかかっているので、受光素子への逆バイアス電圧が光電流の大きさによって変化することになります。つまり受光素子の動作条件が変わってしまうことになります。入射光の有無を検出するだけで良いならこれで十分ですが、光の強度を測定するような場合には誤差が大きくなります。
これを解決するためには演算増幅器(オペアンプ)を使う方法があります。オペアンプについては「半導体集積回路」の12項で説明をしていますが、非常に増幅率の大きい増幅器で入力抵抗が非常に大きく、出力抵抗が非常に小さい特性をもっています。
このオペアンプを使った受光素子による光検出回路を図17-2に示します。オペアンプAmpは増幅率が非常に大きく、理想的には無限大です。ということは出力電圧が有限の値なら入力端子間の電圧は非常に小さくほとんど0でなければなりません。
図の回路では入力端子の一方がグランド電位ですから、受光素子PDと抵抗Rが接続されているもう一方の入力端子もほとんどグランド電位に固定されていることになります、このため受光素子と抵抗器が接続されている点の電位は光電流にかかわらず一定で、受光素子の他端が一定の電源電圧に接続されていますから、受光素子PDにはつねに一定の逆バイアスがかかっていることになります。また光電流はすべて抵抗に流れることになり、この抵抗両端の電圧、すなわちオペアンプの出力端子の電圧を測れば、一定バイアス化での光電流の大きさがわかり、光強度への換算が容易かつ正確にできます。
もっとも半導体受光素子は光の強度の正確な測定を求められる計測器にはあまり使われていません。半導体の光電変換は温度などの影響を受けやすく正確な測定には適していないからです。では何に使われるかというと、制御です。光の強弱の変化を検知して、それに応じた動作をする電子回路などで、入力情報を得るのによく使われます。
一例を挙げると、半導体レーザの光出力を安定化する回路があります。半導体レーザも条件によって出力光の強度や波長が変化しやすいので、出射光を受光素子によって監視(モニタ)し、その出力にしたがって半導体レーザの駆動条件を調整する回路です(半導体レーザ、49項参照)。
このような半導体レーザの制御回路の一例を図17-3に示します(1)。受光素子PDを半導体レーザLDの出射光の一部が入射するような位置に置きます。光が入射すると、その強度に従って受光素子PDに電流が流れ、その大きさが抵抗器R両端の電圧Vによって検知されます。この電圧は比較回路に入力され、基準電圧Vrと比較されます。基準電圧にはツエナーダイオードZなど定電圧ダイオードを使うのが簡単です。
測定電圧が基準電圧より低いと半導体レーザの駆動電流を増やし、逆に測定電圧が基準電圧より高いと半導体レーザの駆動電流を減らすようにはたらきます。
ところで半導体レーザの応用では定常的な発光よりも光がオンオフする変調光が使われることが多いです。その場合には光強度の平均値を使ってこれを一定に保つ方法が使われます。平均光出力を検知するには図17-4のようにコンデンサCを使った回路を使います。受光素子PDを流れる電荷がコンデンサに蓄積されます。一定時間測定すればこの電荷量は平均光出力に対応することになります。受光素子を図17-2の場合と逆に接続していますが、これはコンデンサの電荷が受光素子を通って逃げるのを防ぐためです。受光素子はほぼゼロバイアスで使われることになります。
(1)特開昭59-034683号
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