産業/特許

3.書誌的事項を確認する<法律>

 照会、取得した特許2540791号の内容をみていくことにします。技術的内容に入る前に、まずはこの特許の成り立ち(いわゆる書誌的事項)について確認しておくことにします。書誌事項は特許情報プラットホームで番号照会したとき、テキスト形式での表示で一番上の枠に表示されるような内容、公報では第1ページ(フロントページと言います)に記載されている事項です。

 フロントページの一番上をみると、真ん中に「特許公報」とあり、左側に「日本国特許庁」とあります。また右側に特許番号が記載されています。特許番号の下に「登録日」が平成8年(1996)7月25日と記載されています。この日からこの特許が有効になったことを示す重要な日付です。つまりこの日以降、この特許の請求項に書かれている内容のことを他人が勝手に行うと特許権を侵害した罪に問われる恐れがあるということです。

 ところで左側には発行日として平成8年(1996)10月9日と記載されています。これはこの公報が発行された日を示しています。出願した特許が審査をパスすると、出願人には特許査定の連絡があります。出願人が登録料というお金を支払うと、特許庁では2540791のような番号を採って特許原簿に登録します。この日が登録日で、この時点では特許公報は発行されていません。この特許の場合のように、特許公報の発行は印刷作業などのため登録日から2、3ヶ月遅れます。つまり特許が登録になっても、一般の人がそれを知ることができるのは2、3ヶ月後になるということです。

 つぎに罫線の下の欄を見ましょう。ここに書かれているのは特許の技術的内容の分類です。これは国際的に統一されたコードが決められています。どこの国の特許でもこのコードをみれば、それがどのような技術を対象にしているのかがわかります。これについては13項で説明します。

 なお、右下に「請求項数4(全6頁)」とあります。この特許の請求項の数が4つで、公報のページ数は6ページであることがわかります。

 さらに下の罫線の下左側の欄をみてみましょう。ここは重要な欄です。まず出願番号と出願日が書かれています。そしてその下に公開番号と公開日が書かれています。日本の特許は現在では1件について3種類の番号が付けられます。出願したとき付けられるのが出願番号で、特許出願を略して「特願」という語が付きます。その後、1999年以前に出願されたものについては和暦を略してこの件なら「平3」(平成3年の出願という意味)と通し番号が付きます。2000年以降の出願については「特願2005」などと西暦が使われるようになっています。その後にハイフンで区切って6桁の通番が付きます。

 出願日は特許にとってもっとも重要な日と言えます。この特許では平成3(1991)年12月24日となっていますが、この特許の権利が有効なのはこの出願日から(正確にはその翌日から数えて)20年間、すなわち2011年12月24日までということになります。登録日は有効期限には関係がありません。またこの出願日より前に同様な発明内容が世の中に知られていないことが、この特許が権利として認められる条件となります(後で説明するような例外はあります)。

 特許は出願されてから1年6ヶ月が経過すると公開特許公報が発行されて、内容が一般に公開されます。このとき付けられるのが公開番号です。番号の形式は出願番号と同じで頭に「特開」の文字が付きます。公開日は出願日からぴったり1年6ヶ月後という訳ではありません。この特許は平成5年(1993)7月23日となっていますので、1ヶ月ほど遅れています。

 この特許公報には公開日の下に「優先権主張番号」、「優先日」、「優先権主張国」という項目の記載があります。これらはすべての特許にあるものではないので、話を複雑にしないため、ここでは説明を省略し後の項(11項)で説明することにします。

 このように1件の特許には、出願番号、公開番号、特許番号の3つが付けられます(もっとも特許番号は特許として認められなかった場合には付きません)。特許情報プラットホームには特許公報だけでなく公開特許公報も収録されています。これについては次項で見てみることにしましょう。

 つぎに右側の欄ですが、一番上に特許権者として「日亜化学工業株式会社」という会社名とその所在地が記され、つぎに発明者として「中村修二」、「岩佐成人」という二人の氏名と住所が記されています。この特許の内容である発明は中村修二、岩佐成人の両氏によって共同でなされたものですが、特許権は日亜化学工業株式会社という企業が所有していることがここで分かります。

 以上がこの特許の書誌的事項のあらましであり、この下の欄からがこの特許の内容になります。