科学・基礎/結晶光学

17.まとめ

 「結晶光学」とは光と物質の相互作用のうち、物質の方が結晶である場合について扱う学問分野です。一方の光は電磁波ですから、電磁気学によって考えます。これはマクスウェルの方程式が基礎になります。

 さらに結晶光学での電磁波の性質として偏光が極めて重要です。この偏光は早くも19世紀初頭には科学者の関心を集め、基本的な現象はこの時期に発見されています。それにも拘わらず、なかなか直感的な理解が難しく、いろいろな表現方法が工夫されてきました。

 他方、結晶の方は原子の集合体であり、原子は正電荷をもつ原子核と負電荷をもつ電子からなっているので、光が結晶中に進入すると電磁波とこれらの電荷とが電気的な相互作用することになります。その相互作用は誘電率あるいは屈折率という物質の性質として現れてきます。ただし結晶の特徴は方向によって性質が異なる異方性にあり、誘電率や屈折率も異方性を考慮して考える必要があります。これがまた理解を難しくする理由になっています。

 なお、結晶光学に通常含まれるひとつの分野として外力の効果があります。結晶に電界や磁界、機械的な応力などが作用するとき、光学的な性質がどのように影響されるかを考える分野です。ここではこれを含めないことにしました。この外力の効果は光の状態をコントロールするのに使われ、デバイスとして応用されます。このようなデバイスについては別に「光制御素子」というテーマを設けるため、この効果はそちらで扱った方がより直接的と思われるためです。

 最後に参考とした文献を挙げておきます。各項にも関連する文献を挙げていますが、ここでは結晶光学全般についての文献を挙げます。書籍を除いてネット上で参照できるものを主体とします。

(1)応用物理学会光学懇話会編、「結晶光学」(1975),森北出版

(2)小川智哉、「結晶物理光学」(1976),裳華房

(3)吉原邦夫、「物理光学」、(1966)、共立出版

(4)土井康弘、光学、Vol.2 No.1~4、「講義」基礎結晶光学(1)~(4)、(1973)

(5)尾中龍猛、他、光学、Vol.17, No.1~12、「講義」光と物質の相互作用(1)~(12)、(1988)

(6)栗田進、「偏光」、https://www.luceo.co.jp/common/pdf/technical/henkou01.pdf

(7)偏光とは何か(光の強度と偏光)  http://fnorio.com/0124polarization_of_light0/polarization_of_light0.html