光デバイス/OLED
1.はじめに
テレビやコンピュータ(PC)の表示装置は液晶式が一般的になっていますが、有機EL式の製品も少しずつ見られるようになってきました。液晶が実用になったときも結構驚きがあったようですが、有機物の発光素子が実用レベルに達したことは大変なことです。
上記のように商品のキャッチコピーとしては「有機EL」という語が使われていますが、これは論文や特許の学術用語としてもこの語がまだ多く使われていることによると思われます。ここではあえて「有機発光ダイオード(OLED)」という語を使うようにしました。その理由は11項以下の「エレクトロルミネッセンス素子」をみていただければわかると思います。
有機分子の発光をデバイスとして設計ができるようになったのは、量子化学における分子軌道法という近似理論によるところが大きいのですが、これについては「有機分子の発光の物理」を参照して下さい。
この理論によって有機分子による発光は化合物半導体のバンドモデルと見かけ上同じような考え方で取り扱えるようになり、有機発光ダイオードの層構造の設計が可能になったと言えます。
次項から10項までは、有機発光ダイオード(OLED)について、化合物半導体LEDとの相違点に注意しながら説明します。
代表的な有機分子の構造式も多く掲載しましたが、この分野の特許では膨大な種類の分子が構造式とともに掲載されていることが多いです。有機物は非常にバリエーションが多いのが特徴で、特許では権利の抜け穴ができるのを恐れて、できるだけこれらを網羅するようにしているようです。これらを区別するため、有機物には命名に一定の規則がありますが、ここではこのような有機化学には立ち入りません。
11~13項は、OLED開発への流れの源流とも言えるエレクトロルミネッセンス素子について取り上げています。