光デバイス/光制御素子
1.はじめに
これから取り上げる「光制御素子」ですが、「光制御素子」と聞いてもあまりイメージが沸かないかも知れません。この用語は実はあまり定着していないようです。ここでは入力された光を外部信号によって制御し、光のまま出力する素子全般を意味することとします。こう言うとかなり広い範囲になるかも知れませんが、例えば発光素子は入力される光がないので、除外されます。受光素子は逆に光を出力しないので、これも除外されます。またレンズやプリズム、偏光子のように入力された光に対して何か作用し、光を出力する素子であっても、これらは電気信号などの制御信号を外部から加えていないので除外されます。
ではどういう素子が該当するかというと、代表例は光変調素子です。一定強度の光を入力し、別に振動する電気信号を加えると、その電気信号の振動にしたがって出てくる光も同じ振動をする(これを変調といいます)ような素子です。何に使うかというと光通信です。通信情報は元来、電気信号です。音声のようなアナログ情報もありますし、コンピュータが扱うデジタル情報もあります。この情報を遠方に送る場合、電気信号のまま送ることもできますが、大量の情報をより早く送るには光を使うのが有利なことがわかっています。このときどうしても電気信号を光信号に変換しなければなりません。これを行うのが光変調素子です。
実は光を発する半導体レーザや発光ダイオードといった発光素子も、駆動電流を情報に従って変化させれば、駆動電流に従って変調された光信号を発します。この場合は光変調素子は不要です。ではなぜ光変調素子が必要なのか、についてはこの後の項で説明します。
光の強度を変えるにはどのような方法があるでしょうか。何か光線を遮るものを挿入する、光線を曲げて逸らす、というのが原始的な方法でしょう。もう少しスマートな方法としては、物質に光を吸収させる方法があります。さらに光の性質を利用するならば干渉という現象が使えます。これらの現象を利用するためには物質の吸収係数や屈折率を電気信号に従って変える必要があります。電気信号によって吸収係数や屈折率を変える原理というのは実は様々あります。しかし大体はあまり一般的なものでなく、ここではこれらを紹介するのがひとつの目的になります。
このように光変調素子だけでもいろいろな話題がありますが、光制御素子に属するデバイスはこれ以外にもいろいろあります。光スイッチとか光シャッタと呼ばれる素子は光変調素子の一種とも言えますが、光を単純にオンオフする素子です。光可変減衰器というものもあります。音の大きさを調整するボリュームのように光の強度を調整する素子です。
以上は光の強度に関するものでしたが、光の波長を制御する素子もあります。ある波長範囲の光だけ遮断したり、通過したりする素子はフィルタと呼ばれますが、この波長特性を外部信号によって変えるような素子も光制御素子の一つと言えます。また入力光の波長そのものを変更する波長変換素子というものもあります。
さらに電気の整流器のように光を一方向だけ通過させるアイソレータや光の方向を変える光偏向素子などもあります。ここですべてを網羅することはできませんが、重要なものを選んで紹介していくことにします。
この「小さな石たちの物語」は半導体デバイスを紹介するページです。従来、光制御素子は誘電体材料を用いる場合が多かったと思いますが、ここでは敢えて半導体を用いる場合を主に紹介していきます。