光デバイス/発光ダイオード

 

52.変圧回路(その2)

 ここで代表的なDC-DCコンバータの回路例とその動作原理を紹介することにします。

 前項で説明したようにコイルに急に電圧を加えると電流はゆっくり増加し、エネルギーが蓄積されます。また加えていた電圧をゼロに戻すと、電流はゆっくり現象し、蓄積されたエネルギーが放出されます。変圧回路はこの動作を巧みに応用しています。

 図52-1に代表的回路の一つを示します。この回路でトランジスタがスイッチに相当します。ベースの電圧によってコレクタ-エミッタ間をオンオフ、つまり導通状態と非導通状態とを切り換えます。

 このトランジスタをオンにすると、前項の回路同様に直流電源(電圧:\(V_{0}\))、コイルL、負荷抵抗RRが直列につながった回路ができて、コイルに電流が流れます(赤矢印)。このときコイルに流れる電流 \(I_{L}\) は図52-2の赤線波形のように徐々に増加します。前項で示したように電流が飽和するまでスイッチをオンにし続けず、\(t_{ON}\) を短くすると、図のように近似的に電流は時間に対して直線的に増加するとみなせます。

 トランジスタのエミッタ側にあるダイオードはエミッタ電圧が上昇すると逆バイアス状態になるので、電流は流れません。負荷と並列のコンデンサCは負荷両端にかかる電圧に充電されます。

 つぎにトランジスタをオフにすると、電源は切り離されます。コイルに蓄積されたエネルギーは負荷、ダイオードでできる閉回路を通して放出されます(図52-1青矢印)。負荷を流れる電流 \(I_{L}\) は図52-2の青線波形のように徐々に減ります。電流が減りきらないうちにトランジスタをオンにすると負荷には電流が流れ続けます。

 負荷両端の電圧 \(V_{RL}\) はコイル両端に電流変化に比例した電圧が発生しているため、電源電圧より下がります。つまり降圧回路になります。この電圧はトランジスタをオンにしている時間 \(t_{ON}\) とオフにしている時間 \(t_{OFF}\) の比(デューティー比)によって変えることができます。

 負荷を発光ダイオードにした例が図52-3です(1)

 もう一つの代表例を図52-4に示します。図52-1とはスイッチングトランジスタの位置がちがっています。トランジスタをオンにするとトランジスタのコレクタ-エミッタ間はほぼ短絡状態になり、直流電源につながったコイルLにはトランジスタを通してエネルギーが蓄積されます(赤矢印)。電流 \(I_{L}\) は図52-5の赤線波形のように徐々に増加します。ダイオードと負荷が直列につながった回路にはほとんど電圧がかからないので、最初は電流が流れません。

 つぎにトランジスタをオフにすると、電源、コイルL、ダイオード、負荷RLが直列に接続された回路を通して電流が流れます(青矢印)。コイルに蓄積されたエネルギーはこの回路を通して放電されます。

 つぎにもう一度、トランジスタをオンにすると、コイルに電流が流れるのは最初とおなじですが、今度はコンデンサCが充電されているので、これが負荷を通して放電され、負荷には電流が流れます(赤矢印)。ダイオードがあるのでこのときトランジスタ側には電流は流れません。

 この回路ではトランジスタがオフのとき、負荷にはほぼ電源電圧 \(V_{0}\) がかかります。そしてさらにコイルに発生する誘導電圧が同方向に加わりますから、負荷にかかる電圧は電源電圧より高くなります。つまり昇圧回路となります。電圧はオンオフのデューティー比によって変えることができます。

 発光ダイオードに応用した例を図52-6に示します(1)

 上記の回路で使用したコイルはチョークコイルと呼ばれることがあります。チョーク( Choke)とは「窒息する」とか「抑える」という意味ですが、コイルが電流の変化を遅くすることから電流を通さないようにするコイルという意味でこう呼ぶようです。またここで示したDC-DCコンバータはチョッパ型と呼ばれることがあります。直流をスイッチで切る(chop、チョップする)というところからこのような名前が付いています。スイッチングと似たような意味です。

(1)特開2009-231644号