光デバイス/発光ダイオード
48.パルス駆動
発光ダイオードは長時間点灯したままで使うこともありますが、多くの応用ではむしろ短い時間間隔で断続的に点灯させて使われています。町中で点滅するイルミネーションもこの例ですが、多数の発光ダイオードを使って文字や画像を表示するLEDディスプレイでは個々の発光ダイオードを信号にしたがってオンオフするように駆動します。
直接人の眼に触れないデジタル通信用光源として発光ダイオードを使う場合も、伝送信号にしたがって発光ダイオードを点滅させます。光ファイバを使う場合はもちろんですが、空中に光を放射する空間伝搬型の通信もあります。たとえばテレビのリモコンなどはこの例です。人の眼に見えない赤外光を出す発光ダイオードを使い、チャンネルボタンを押すと特定のパルス信号で発光ダイオードが点滅するようになっていて、その光信号を受像器側で受けてチャンネルが切り替わります。
発光ダイオードを点滅させるためには図48-1(a)のようにスイッチを使って電流をオンオフすればよいわけです。電気信号によってオンオフするにはトランジスタをスイッチング素子として使うのが一般的です。基本的な回路は図48-1(b)に示すようなものです(1)。
この回路に使われているnpnトランジスタは図48-2のようなコレクタ電流 \(I_{C}\)-ベース-エミッタ間電圧 \(V_{BE}\) 特性を持っています。これによればベース電圧が増加するとコレクタ電流が急激に増加するのがわかります。この特性を利用して、ベース端子に0Vとプラスの電圧の2点間で変化するパルス信号を入力すると、これにしたがってコレクタ電流をオンオフできます。このような駆動方法をここではパルス駆動と呼びます。
ベース-エミッタ間電圧 \(V_{BE}\) が0.3Vを越えるとコレクタ電流 \(I_{C}\) が急激に増大します。\(V_{BE}\) はせいぜい0.7V程度までで、これ以上大きくするとコレクタ電流が大きくなりすぎ、トタンジスタが壊れる恐れがあります。しかしトランジスタ回路の電源電圧は通常5V程度を使いますから、わざわざ0.7Vの電圧をつくるのは面倒です。
そこでベースに5Vのパルスを入力してもトランジスタが保護されるようにエミッタに抵抗Rを入れます。こうすると抵抗の両端に4.4V位の電圧がかかり、\(V_{BE}\) は0.6V程度に抑えられます。
一方、コレクタ-エミッタ間をみると、コレクタ電流はエミッタ抵抗で決まります。仮にベースに加えるパルス電圧を電源電圧 \(V_{CC}\) に等しくすると、エミッタ抵抗Rの両端の電位差は \(V_{CC}-V_{BE}\) ですから、 \[I_{C}=\frac{V_{CC}-V_{BE}}{R}\] となります。この電流が発光ダイオードを流れ、発光が生じます。
なお、コレクタ電流が流れている状態をトランジスタがオン状態であるといいます。このときコレクタ-エミッタ間の電位差は0Vに近くなります。一方、ベース電圧を0Vにするとコレクタ電流は流れなくなりますが、この状態をオフ状態といいます。このときコレクタ-エミッタ間には電源電圧 \(V_{CC}\) がほぼそのままかかります。
(1)例えば特開平10-135521号