光デバイス/発光ダイオード

35.リードフレーム(その1)

 半導体チップを回路基板などに接着するのではなく、半導体チップの電極に外部と電気的につながるリード線を直接接着してしまう実装方法があります。リード自身で半導体チップを支えるので、リードにはやや厚さの厚いしっかりした材質が使われます。もちろん電気をよく流す良導体でなければならないので、材料としては銅とか真鍮など銅の合金がよく使われ、厚みが0.5mm程度の板が原材料になります。

 まず図35-1のような砲弾型パッケージの発光ダイオード(LED)を取り上げます。このタイプのパッケージの構造には前にも触れていますが、プラス用とマイナス用の2本リードA、Bがパッケージの外に出ていて回路基板の孔に挿入し固定できるようになっています。リードAの上端はLEDチップが載せられるようにカップ状に加工されています。この場合、チップ下面が電極になっていて、チップ上面の電極はリードBと細い金属線(ワイヤ)で結ばれています。さらにリードの上部とLEDチップおよびワイヤは砲弾型の透光性(透明)樹脂で固めてあります。この樹脂はLEDの発光色に近い色に着色されていることが多いようです。

 これをどう作るかですが、1本のリードの先にチップを接着し、チップ上の電極ともう1本のリードを細い線でつなぐためには、2本のリードを近い距離にしっかり固定しておく必要があります。2本のリードが互いにばらばらに動くようでは接続したワイヤは切れてしまいます。この2本のリードの固定がいつもしっかりできているのがリードフレームの大きな特徴です。

 リードフレームを作るには先程述べたように厚さが0.5mmくらいの銅のような金属板を用意します。この程度の厚さの銅板はけっこうしっかりしていて、もちろん力を加えれば撓みますが、ふにゃふにゃと簡単に曲がることはありません。

 まずこの金属板を加工してリードフレームを作ります。図35-2ができあがったリードフレームの例です(1)。フレーム(frame)は日本語では「骨組み」とか「枠」という意味です。図のようにリード線が骨組みのように固定されていることから、リードフレームと呼ばれます。

 この例ではプラス、マイナスで一組のリードA、Bが3組作られています。1枚のリードフレームから多数のパッケージを作った方が効率的なので、実際にはもっと多数の組のリードが1枚の金属板のなかに作られます。このようなパターンは、このパターンと同じ形に作った金型を使って金属板を打ち抜いて作るのがもっとも簡単です。化学的なエッチングによって金属板に穴開けをすることもできます。

 ここで注目しておきたいのはダイバーとよばれる横串のような部分です。これによって2本1組のリードが正確な間隔で固定され、さらに隣の1組も一体に固定されています。ダイバーはフレームを形作る重要な要素です。ただしこのダイバーも金属板の一部ですから、このまま残してはプラス、マイナスの電極となる2本のリードが短絡した状態になってしまうので、後で切り離すことになります。

 このリードフレームを使って砲弾型LEDパッケージを作製する工程を図35-3に示します(1)。

 (a)のようにリードフレームを準備したら、(b)のようにLEDチップをリードBの端の決められた場所にダイボンドします。前項では配線基板上へのダイボンドについてだけ説明していますが、リード上へのダイボンドも同様に行えます。その後さらにLEDチップ上の電極(図示していません)とリードBとを細い金属線(ワイヤ)で結線します。これはワイヤボンドと呼ばれる方法で、後項で説明します。

 つぎに(c)のようにリードと同じ間隔になるように砲弾型の凹部をもつ樹脂型を用意し、そのなかに融けた透光性樹脂を充填します。

 つぎに(d)のようにチップを固定したリードの先端部分を樹脂型のなかの透光性樹脂に漬けます。樹脂を硬化させたのち、(e)のように樹脂型からリードを引き抜くと砲弾型の封止樹脂ができます。最後にダイバーを切り離します。2本のリードは封止樹脂で先端部が固定されているので、ダイバーを切り離してもばらばらにはならず、一つ一つの個別の部品としての発光ダイオードパッケージが完成します。

 表面実装型にもリードフレームを使ったタイプがあります。これについて次項で取り上げます。

(1)特開2001-223311号