光デバイス/発光ダイオード
32.半導体チップの固定と電気接続
パッケージになくてはならない機能には、半導体チップを固定する機能と電気接続をする機能があります。この2つの機能は別々に独立している場合と両方を兼ねている場合があります。
チップをパッケージ内で固定するための相手方の部材としては前項で例にあげたリードやステムのほか、プリント基板などがあります。
またチップの固定はチップの基板面を接着する場合と、基板上に積層した半導体層の表面側を接着する場合とがあります。前者をフェイスアップ実装、後者をフェイスダウン実装とかアップサイドダウン実装などと言います。半導体デバイスを作るときには、基板を下にして、その上に半導体層を積層するので、一番上の半導体層の表面をフェイスとかアップサイド(上側)と呼び、これを上側(アップ)かまたは下側(ダウン)にするかによって上記のような呼び方をします。
パッケージの固定方法には以上のようにいろいろな要素があり、それらの組み合わせになるので、パッケージの構造にもいろいろな種類があります。まずはこれらを整理したうえで、個々の部材を見ていきたいと思います。なお、チップのことをダイということもあり、チップを接着固定することを「ダイボンディング」ということがあります。
固定と電気接続を別々に行うのは、通常、基板面で固定を行うフェイスアップ実装の場合で、しかも基板を電極として利用していない場合になります。発光ダイオードで言えば基板がサファイヤなど絶縁体の場合は、チップの固定と電気接続は別々に行われます。図32-1はこのようなタイプのパッケージの断面図です(1)。
配線層を設けたプリント基板の上に発光ダイオード(LED)チップを実装したパッケージですが、チップ上の電極(図示は省略しています)と配線層との電気接続は2本のワイヤ(金属の細線)によって行われています。
チップ下面は接着剤でサブマウントと呼ばれる台の上に接着されています。サブマウントは表面が平坦で接着がしやすくまた熱伝導のよい材料で作られた小さな板状の取り付け台です。このタイプはチップ下面に電極がないので、接着剤は導電性のあるものでもないものでも使用することができます。またサブマウントは必ずしも必要でなく、プリント基板上または配線層上に直接接着することも可能です。
通常はチップとワイヤを保護するため、チップとワイヤを覆うように透明な樹脂などを被せます。これを封止材などと呼びますが、別途詳しく取り上げます。
図32-2は固定と電気接続を兼ねている場合です。これはフェイスアップの場合で、チップの下面が電極になっている必要があります。相手側はプリント基板の配線層で導電体です。さらに接着剤も導電性である必要があり、はんだや導電性接着剤などが使われます。下面が電極の一方を担うので、上面側に他方の電極があります。この上面電極とはワイヤで接続がなされます。
フェイスダウン実装の場合は普通、固定と電気接続を兼ねます。半導体層表面の電極は小さいので、フェイスアップの場合のような普通の接着は難しくなります。この場合は図32-3に示すようにバンプと呼ばれる小さな球状の金属を使い、チップを基板の配線層に押し付けて固定と電気接続を行います。基板の配線層はチップの電極間隔と合うように作られている必要があります。これをフリップチップ(Flip Chip)接続と呼びます。フリップというのは英語でひっくり返すという意味があり、フリップチップはチップをひっくり返すという意味になります。誰が命名したのでしょうか。
この場合、光は基板側から出ることになりますから、出射光を通さないような基板は使えないことになります。図からも明らかなようにワイヤを使わないためにワイヤを引き回すスペースが不要で封止材料を薄くできるので、パッケージを小型にできる特徴があります。
(1)特開2006-17360号