光デバイス/発光ダイオード

 

24.発光ダイオードの寿命

 LEDを光源に使った照明器具は白熱電球や蛍光灯に置き換わりつつありますが、その最大の理由は省エネルギー性でしょう。同じ明るさを得るのに必要な消費電力は1/4くらいで済みます。

 もう一つの重要な理由は寿命が長いことです。LED電球の箱などには寿命40000時間などと書かれています。点灯し放しで4年半ほどは壊れないことになります。普通の使い方なら10年くらいはもつということです。LED電球は白熱電球に比べれば高価ですが、この寿命の長さを考えれば十分割に合うということが言えます。

 ではこの寿命はどのようにして決められているのでしょうか。もちろん4年5年点灯し放しにしていつ壊れるかを調べるのがもっとも直接的ですし、実行するのも不可能ではありません。

 しかしこの長い試験時間が終わらないうちに、技術開発によってより特性の優れた製品が出てくる可能性があります。そうなると試験結果が出る前に新製品が出てしまい、その寿命はどうかということになって、いつまで経っても試験が追いつかないことになりかねません。

 なんとか短時間で寿命を推定する必要があります。これはどうしたらよいでしょうか。このような話題について今後考えていくとともに、寿命を決める要因についても考えていきたいと思います。

・平均寿命(MTTF)  まず寿命とは何かということですが、故障が発生するまでの平均時間と考え、これを「平均寿命」と言います。英語ではMean Time To Failure (略してMTTF)でまさに故障に至るまでの平均時間のことです。MTTFは故障が発生したらその製品はそれで使えなくなり捨ててしまう場合に使います。LED電球などはこれに当たります。LEDチップ自身の場合も同じです。

 これとちがって故障しても修理が効く製品があります。この場合は故障が発生してからつぎの故障が起こるまでの期間の平均値として「平均故障間隔」を使います。英語ではMean Time Between Failure (略してMTBF)と言います。

 製品の故障には図24-1に示すように3段階があると言われています。図の青色の曲線の形からバスタブ曲線と呼ばれています。バスタブとは、浴槽のことですが、日本式のではなく、洋式の浴槽に似た形のことです。横軸は時間、縦軸は故障率です。故障率の定義は後でしますが、ここでは故障が発生する程度といった意味で十分です。

・初期故障  製品を使い始めてあまり時間が経たない間は故障が発生する可能性が高い期間です。この期間に起こる故障を「初期故障」と言います。

 製品を製造する場合、どんなにうまく作っても多数を作ると必ず不良品が発生します。その製品を世に出す場合、何らかのチェックを行って初めから不良品が出て行くのを防ぐのは当然です。しかしこのチェック時点では正常でも、何か不良原因を抱えているものを完全に取り除くことはできません。このような製品が使用開始後、短時間で故障する可能性がかなりあります。製品の保証期間はこの故障に対応するものです。

・偶発故障  初期故障はしばらくの期間で発生し尽くし、故障の発生頻度は減少します。しかし故障発生の可能性は常にゼロになることはなく、一定程度何らかの原因で故障が発生します。これを「偶発故障」と呼んでいます。

・摩耗故障  使用期間が長くなると、各部に疲労や摩耗が発生し、そのために次第に故障の発生頻度が再び増加します。これを「摩耗故障」といいます。この摩耗故障により故障率の値に規定値を定め、その値まで故障率が上昇した時点までの時間を「有効寿命」または「耐用寿命」などと呼びます。LED電球の40000時間はこれに相当するものです。

 これらの故障発生については一般的な理論がありますが、それについては別途紹介します。