光デバイス/発光ダイオード

10.電極と窓層

 LEDは6の基本構造で説明したように、どうしても一対の電極を必要とします。この電極がLED素子から外へ出ようとする光を遮ってしまう場合があります。これはせっかく発光した光を無駄にするので、できるだけ避けるべきです。光の通り道に電極を置かないようにすれば簡単に解決できそうですが、現実にはなかなか難しい問題です。

 具合の悪いことに電極の真下の電極に近い部分の発光層からもっとも光が出るので、その部分の光が遮られやすくなってしまいます。これを解決するためには光の出射方向にある電極はできるだけ小さくし、かつ電極の真下でない部分を主に光らせるというかなり無理な要求を両立させる必要があります。

 ここで考え出されたのが「窓層」を設けるという手段です(1)図10-1のように上部電極直下の層(これを窓層あるいは電流拡散層と呼びます)を厚く抵抗の低い層にします。もちろん光を透過するために窓層にはバンドギャップの大きい半導体を選びます。この下に発光層を置くと、電極から注入された電流は窓層の抵抗が低いので図の破線のように電極直下だけでなく横方向にも広がって流れます。このため電極直下でない部分の発光層からも発光が起こり、この光は電極に遮られずに出射されます。

 このような場合でも電極直下での発光は起きています。これは無駄なので、電極直下の発光層には電流が流れ込まないようにする工夫もあります(2)図10-2のように上部電極の真下にこの電極と同じ面積の電流ブロック層という抵抗の高い層を設けます。この層の上の窓層で広がった電流は矢印で示されているようにpn接合(発光層)の広い部分に流れ込み発光を生じますが、電極の真下の部分には流れ難くなります。このように電流が阻止された部分の発光層は発光しません。これによって発光は無駄なく上部へ取り出せることになります。

 以上は縦型構造の場合の例でしたが、横型構造の場合も同じように考えられます。上部電極の直下に電流ブロック層を配置し、電流を電極直下に流さないようにします(図10-3)。

(1)例えば特開平05-275740号(特許3639608号)

(2)例えば特開平06-29570号