光デバイス/発光ダイオード

1.はじめに

 発光ダイオード(英語ではLight Emitting Diode、LEDと略す)は生活のなかで直接、人の眼につくところが他の電子デバイスと大いに違うところです。例えば多くの電気器具、電子機器はスイッチを入れるとパイロットランプが点灯しますが、このランプは大方LEDですから、まず眼に入るのはLEDの発光ということになります。

 パイロットランプに以前は白熱電球や放電管の小さいものが使われていましたが、これらはほとんど姿を消しました。理由はLEDの方がより小さく寿命も長いこと、またカラフルにいろいろな色が選べることが挙げられるでしょう。

 写真Aは東京の都心で数年前に撮影したものですが、たくさんのランプを点滅させる街中のイルミネーションは、青色LEDが普及してからその色合いが圧倒的に華やかになりました。以前は色をつけた電球などが使われていましたが、最近は鮮やかな色が出せ、しかもたくさん点灯させても消費電力が少ないLEDにほとんど置き換えられています。

 このイルミネーションに近づいてみると、LEDの素子がどんなものかを知ることができます。写真Bのように電球とは違って発光しているのは点のように小さい部分であることがわかるはずです。

 しかしもっとも重要なのはLEDが照明の分野に進出したことでしょう。これはLEDが白色光を出せるようになったためです。

 私たちは昼間は太陽光のもとで暮らしていますが、この太陽光は色のない白色の光です。白色光はプリズムを通すと虹の七色の光に分かれるので、実際には白色光はいろいろな色の光が混じってできていることがわかります。人工的には赤、緑、青の三原色の光を混ぜることによって白色光が得られます。また最低限、緑と赤、あるいは青と黄のような補色関係にある2色の光を混合することによっても白色光が得られます。

 LEDのような半導体の発光はほぼ単色の光です。そこで白色光を得るためには2種類あるいは3種類の色のちがうLEDを用意し、それぞれが発光する光を混ぜる必要があります。1980年代までは青色の発光をするLEDがなかったのですが、1990年代に入ってそれが開発されたため、LEDによる白色光源が実現しました。2014年のノーベル賞の受賞対象となったこの青色LEDの開発の経緯については別に記しています。

 このLEDは当初は弱い光しか出せずとても照明用などには使えなかったのですが、急速に強い光を出せるように改良が進められ、昔ながらの白熱電球と単純に交換するだけで使える写真CのようなLED電球が市販されるようになりました。同じ明るさで比べると、白熱電球の20%以下の消費電力で済み、寿命も長いことから、急速に普及が進んでいます。LED電球の具体的構造なども後に取り上げる予定です。

 このほか、三原色のLEDを使ったフルカラーのディスプレイも実現してテレビ画面として使われるようになっています。およそ生活のなかで必要な光はすべてLEDで供給できる時代がやってきたと言えます。このように大変重要な電子デバイスとなったLEDについて以下に紹介していきます。