電子デバイス/半導体集積回路

1.はじめに

 集積回路とはどういうものでしょうか。英語ではIntegrated Circuit、頭文字をとって「IC」と言うこともあります。このintegrateを「集積」と訳したわけですが、この語を文字通りにとれば、「集めて積み重ねる」という意味になります。ごみの集積場みたいなイメージでしょうか。

 しかし集積回路には集めるはともかくとして、積み重ねるというイメージはあまりありません。むしろ「一体化」という訳語の方が合っているように思われます。ただし「一体化回路」というのもあまりゴロがよくないですが・・・。 もう一つ、「集積回路」は(複数の)回路を積み重ねたものと解釈することもできますが、それは実態を正しく表していません。正しい意味は、「回路を構成する複数の部品や配線を一体化したもの」、です。

 電子回路は真空管時代のように複数の電子部品を電線(ワイヤ)でつないで作ることができますが、手間もかかり配線の間違いも起こりやすいのは明らかです。トランジスタの時代に入って、絶縁基板の表面に回路にしたがって導体の配線パターンをはじめから作っておき、部品を基板上の決められた位置にはんだ付けするという方法がとられるようになりました。この方法は現在も普通に行われています。

 ただこの方法では回路が複雑化して部品数が増えてくると基板が大きくなってしまうという問題があります。ここで初めて集積化という考えが出てきます。トランジスタや抵抗器、コンデンサといった部品として、それぞれ完成した単体(ディスクリート)部品を使うのを止め、トランジスタはチップのまま基板に取り付け、抵抗、コンデンサは小型化したチップ部品として取り付けます。抵抗器については配線の一部を抵抗の高い材料にして配線の一部に作り込むこともできます。このようにして比較的多くの部品をあまり基板を大型にせずに集積することができます。これを混成(ハイブリッド)集積回路と呼んでいます。

 さらに進んで半導体基板(ウェハ)にすべての部品を作り込んでしまおうという考えが出てきました。トランジスタはバイポーラ型にしても絶縁ゲート型にしても半導体基板上に複数作り込むことができます。というか1個作るのも複数作るのもかかる手間は同じです。そこであとは他の部品、抵抗器やコンデンサも半導体基板に作り込むことができれば、複雑な回路を1つの半導体チップ上に形成できることになります。これをモノリシック半導体集積回路と呼びます。現在ではICと言えばこれを指すと言ってよいと思います。ここではこのモノリシック半導体集積回路を中心に話を進めます。