科学・基礎/半導体デバイス物理
1.はじめに
「半導体物理学」のセクションでは対象を単一の半導体材料に限りました。しかし半導体を応用したトランジスタなど半導体デバイスのほとんどは複数の性質の違う層を重ねて作られています。ここではこのような性質の違う層を重ねた場合の半導体の電気的性質について理論をまじえて説明します。
性質の違う半導体を積層したものの代表はpn接合でしょう。p型、n型ができるのは半導体の特徴ですが、これらを接合したpn接合は単体半導体とは違った電気的性質をもち、多くの半導体デバイスはこの接合をベースにしています。そこでpn接合の理論について紹介し、整流機能を説明します。
さらにもう1層加えたpnp接合やnpn接合は言うまでもなく、バイポーラトランジスタとして利用されています。pn接合の延長としてトランジスタによる増幅の原理について紹介します。
半導体同士以外では金属と半導体を接触させる場合があります。半導体デバイスには必ず金属電極を取り付けますが、これとは別に金属と半導体を接触させた場合の特異な性質を利用するデバイスもあります。pn接合が作製できるようになる以前から金属と半導体を接触させた場合の整流現象は知られていました。これに関する理論と、関連して熱電子放出理論についても紹介しています。
さらに絶縁体と半導体を積層する場合があります。半導体の保護層として絶縁層を使う場合も多いですが、それ以外に絶縁ゲート電界効果トランジスタは絶縁体と半導体の接触界面の性質を利用したデバイスとしてよく知られています。このトランジスタの動作原理はバイポーラトランジスタのそれとはかなり異なっていますので、詳しく説明しています。
非常に薄い半導体層を積層して作られる量子井戸、量子障壁もいろいろなデバイスに応用されています。これらは量子力学の基礎理論と直結しているので、他とは少し異質かもしれませんが、紹介することにします。
以下の各項では、これら性質の違う層を重ねた場合の半導体の電気的性質について順に取り上げていきます。